経団連くりっぷ No.60 (1997年 7月24日)

日本・インドネシア経済ダイアログ(共同議長 中村裕一氏)/7月7日

日本・インドネシア経済関係における官民の
インターフェイス


本年1月、橋本総理とスハルト大統領との間で「官民合同経済会議」の開催について合意がなされた。この合意を受けて、経団連とKADIN(インドネシア商工会議所連合)は両国政府の協力を得て7月7日、ジャカルタにて「日本・インドネシア経済ダイアログ」を開催した。
以下は、その概要である。

  1. 経団連とKADINとは、およそ1年半に1回の割合で、「日本・インドネシア合同経済委員会」を両国で交互に開催している。今回の会議は、両国の民間経済人に加えて、政府関係者も参加することにより、両国の経済関係や協力のための方策について、これまで以上に多角的で内容の深い議論を行なうことを目指したものである。
    日本側からは企業関係者73名と政府関係者13名が参加し、インドネシア側からは企業関係者74名と政府関係者17名が参加した。

  2. 中村裕一経団連日本・インドネシア経済委員長、小倉和夫外務審議官、バラムリ インドネシア・日本経済委員長、スマディ外務省対外経済総局長の4人が共同議長を務めた。それぞれの開会挨拶の中で、両国間の経済関係は相互の経済発展にとって重要であり、時として摩擦が生じてもそれを克服し、良好な関係を維持する必要があるとの指摘があった。
    続いて挨拶したアブリザル・バクリーKADIN会頭は、今後重要な経済課題となるソフトウェア開発や人材育成における日本の協力を要請するとともに、文化交流による相互理解の推進が重要であることを強調した。

  3. 会議では、両国間の経済関係を中心に
    1. 「インドネシアの経済開発戦略(中小企業育成策を含む)と日本の役割」
    2. 「民活インフラ整備(都市問題を含む)における官民の協力」
    3. 「南南協力の推進と民間の役割」
    の3つのテーマについて意見交換を行なった。

  4. 以下は意見交換の概要である。

    第1セッション
    「インドネシアの経済開発戦略(中小企業育成策を含む)と日本の役割」

    スティヤント・サントサ サヒッド・グループ社長:
    第2次石油危機後の1982年、インドネシア政府は、それまでの石油輸出に依存した経済成長路線を改めて、非石油製品の輸出に力を注ぐようになった。また、政府が規制緩和、教育水準の向上、貧困の撲滅政策などを推進する一方、民間企業も産業構造の変革に努力してきた。

    日下通産省通商政策局経済協力部長:
    アジア太平洋地域においては、人、モノ、カネの移動が盛んになっている。インドネシアはASEANのリーダーとして、貿易・投資の自由化を自ら率先して進めるとともに、WTOの枠組みを十分に尊重すべきである。

    小谷東京船舶会長:
    戦後、日本企業は、石油危機や為替相場の変動などの状況変化に対応し、リストラを通じて大胆な経営合理化を行なってきており、これが日本経済の発展につながった。また、インドネシア政府が港湾インフラの整備に努力してきたことを評価する。

    第2セッション
    「民活インフラ整備(都市問題を含む)における官民の協力」

    グンボング・プリヨノ地域・都市開発大臣補佐官:
    90年代に入りインドネシアでは、インフラ整備に対するニーズが高まっており、長期の民間融資や外国投資を必要としている。特に、日本のODAについては、インドネシア政府経由で民間を支援する2ステップローンとは別に、民間に対して直接融資することも検討してほしい。

    クスモ チャトゥール・ヤサ社長:
    インドネシア経済は急速に発展しており、交通、エネルギー、通信、上下水道などのインフラ整備が必要に迫られている。また、東インドネシア地域の開発に対しても日本の協力を求めたい。

    木村住友商事副社長:
    最近は、日本の総合商社がインドネシアでのプロジェクトに参画するケースが増えている。インフラへの投資を増やすためには、規制緩和など投資環境の一層の改善が必要である。

    田中海外経済協力基金業務第一部長:
    インドネシアの円借受入額は68年以降の累計で2.9兆円であり、最大の円借款受入国である。民活インフラへの期待は高まっているが、リスクが高いことから、民間は消極的である。民間資金と公的資金との組み合わせによる支援が今後重要になる。

    第3セッション
    「南南協力の推進と民間の役割」

    木島国際協力事業団理事:
    南南協力は途上国から途上国への援助という形でスタートした。現在は先進国も参加する「三角協力」型の援助が主流となっており、日本政府もJICAなどを通じて、アジア諸国に技術協力を行なっている。

    ナナ・ストレスナ 外務省非同盟運動担当特別大使:
    南南協力は77カ国の発展途上国が参加する「非同盟運動」の一環として行なわれている。現在ジャカルタに建設中の「南南技術協力センター」に対して日本の支援を求めたい。

  5. 最後に、両国の経済関係をさらに発展させるために、
    1. 中小企業育成に資するような官民の協力関係のあり方、
    2. 民活インフラを進めるため民間リスクの軽減や資金調達方法、およびBOOやBOTのモデルケースに関する研究、
    3. 南南協力における日本の支援のあり方についてフォローアップ、
    を行なうことで合意した。

  6. なお、中村委員長は翌7月8日、トゥンキー・アリウィボウォ商工大臣を表敬訪問し、本会合の概要を報告するとともに、第15回日本・インドネシア合同経済委員会を98年2月頃に日本で開催する旨伝えた。


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