経団連くりっぷ No.60 (1997年 7月24日)

日本・インドネシア経済委員会(委員長 中村裕一氏)/6月26日、7月2日

インドネシアの政治経済情勢の現状と今後の課題


「日本・インドネシア経済ダイアログ」の開催(7月7日、於:ジャカルタ)に先立ち、当委員会では、6月26日は三平則夫アジア経済研究所地域研究部長、また7月2日には神長善次前駐インドネシア日本大使館公使を招いて、最近のインドネシア情勢について聞いた。
以下はそれぞれの説明概要である。

  1. インドネシア経済の問題点と大統領選挙の行方
    ― 三平 地域研究部長
    1. インドネシアの経済成長は、一見好調に見えるが、世界銀行の報告にも指摘されているように、金融の不安定要因や対外累積債務の拡大などの問題を抱えている。特に、累積債務は1,200億ドルに達しており、巨額な利子支払額が貿易黒字額を上回っている。
      スハルト大統領は第6次5カ年計画(94年4月〜99年4月)で設定した目標成長率6.2%を一昨年頃から7.1%へ上方修正した。現段階のインドネシアの投資効率および輸出の伸び率から計算すると目標成長率を達成すると80〜90億ドルの経常収支赤字が出ることになるが、97年の実勢はバブル含みで8%程度のGDP成長となる見込みである。このままでは外国資本に過度に依存することになり、その結果、さらに経常収支が悪化し、累積債務も拡大するという悪循環をたどる恐れがある。

    2. 5月の総選挙で与党ゴルカル党が圧勝し、野党民主党が敗退した。これを受けて、98年3月の国民協議会正副大統領選挙においてスハルト大統領が続投するのか、また次の大統領になる可能性が高い副大統領に誰が新任するのかが焦点となっている。
      スハルト大統領は76歳と高齢だが、6選を果たす可能性は大きい。引き続きASEANのリーダーとして君臨したいという野心もあろう。
      一方、スハルト自身も後継者を考えなければならない。副大統領ポストとしては、長女トゥトゥット女史以外に、ハルトノ情報相、ハビビ科学技術相、ムルディオノ官房長官、ギナンジャール国家開発長官などの名前が上がっている。

  2. インドネシアの経済発展と国民車構想
    ― 神長 前駐インドネシア公使説明概要
    1. インドネシアの歴史は第二次世界大戦以降が着目を浴び易いが、7〜14世紀頃に、中央ジャワ島にスリウィジャヤ王朝が栄えており、この時期に現在のインドネシア・ジャワ島の文化の基礎が確立されている。インドネシアはインドと中国の文明の十字路にあり、それが料理などの文化に見られる。

    2. インドネシアはオランダから独立後、「建国の父」であるスカルノ前大統領、「開発の父」であるスハルト大統領の2人によってつくられてきた。また、独立直後に、建国の5原則「パンチャ・シラ」が打ち出され、インドネシアのあらゆる法の基盤が形成された。

    3. インドネシアの経済成長の息は長く、69〜94年の25年間の平均成長率は6.8%を記録している。一方、貧富の格差が広がっており、現在の第6次5カ年計画では、所得格差の是正を中心的課題として位置づけている。
      またインドネシアはかつて石油輸出主導型の経済成長であった。しかし、80年以降非石油製品の輸出に力を入れており、その結果、輸出に占める非石油製品の割合が80年台前半は約20%であったのに対し、最近は80%台を記録している。
      さらに、90年台に入り、規制緩和と関税の引き下げが進められている。94年6月には100%外国投資が認められ、同年10月にはAPEC域内自由化を目指した「ボゴール」宣言が採択されている。その結果、外国投資が急速に増えている。

    4. 国民車構想については、インドネシア政府は韓国の起亜社とタイアップして、韓国で製造された自動車を輸入し、これらについて奢侈税と物品税を免除している。日本はこれを不当として、インドネシアとの二国間交渉を続けてきたが、さる6月12日にEUとともにWTO紛争処理パネルの設置を要求し、これが認められた。

    5. 今年8月に日本各地でインドネシア友好祭が開催される。そのメイン・イベントが東京国立博物館で行なわれる王宮博物展である。インドネシア友好祭はワルディマン教育・文化相が中心になって企画しているが、インドネシアは日本にとって友好国であり、こうした文化面での交流を一層促進すべきであろう。


くりっぷ No.60 目次日本語のホームページ