経団連くりっぷ No.60 (1997年 7月24日)

日本ロシア経済委員会総会(委員長 河毛二郎氏)/7月4日

日ロ経済交流促進への取り組み


日本ロシア経済委員会では、去る7月4日に97年度定時総会を開催、来賓の浦部外務省欧亜局長から日ロ経済関係を中心に説明を聞き、続く総会議事で96年度事業報告・収支決算、97年度事業計画・収支予算を、また渡邉東京ガス会長の副委員長退任と安西東京ガス社長の副委員長就任を承認した。浦部局長の説明の大要は以下のとおりである。

  1. ロシアの内外情勢
    1. 昨年7月のエリツィン大統領再選後、大統領の健康問題で停滞の色を濃くしていた国内情勢も、大統領の健康回復と若手の働く新内閣の下、再び改革に向けて始動している。経済も98年に入ると拡大に向かうとの見方が多い。ただ、税制改革、給与や企業間の未払い問題解決、あるいは外資法や生産分与法の整備になお時間がかかろう。

    2. 対外関係では、欧米偏重から全方位外交(インド、中国、日本重視へ)に転じ、NATO拡大を受入れ、サミットの正式メンバーとなった。また、WTO、OECDなどへの加盟に力を入れており、日本も加盟基準達成努力を支援している。

  2. 日ロ関係
    1. 日本の対ロ関係の基本は、1つは、93年の東京宣言に基づき、領土問題を解決し、平和条約を締結する、もう1つは、ロシアの民主化、市場経済化を支援し、諸般の分野での協力を拡大するの2つで、いろいろなプロセスを進めていく中で領土問題を解決していく方向を取っている。

    2. 先の日ロ首脳会談で、会談の定期化とホットラインの敷設で合意した。また、橋本総理の年内正式訪ロの強い要請に対し、総理は、もしエリツィン大統領が極東に来る機会があれば、その機をとらえてそこで週末にでも非公式に話し合いをするのもよいと述べた。極東での会談であれば年内も可能だが、正式な訪ロなれば、明年の早い機会と総理は応じている。トップ同士のコンタクトはロシアのような国の場合重要である。

    3. 昨今モスクワから、領土問題の解決は次世代でとの話が再び流れてきたり、4島での共同経済活動案としてロシアの主権が前提となる合弁や自由経済特区構想が出されたりしていることについて、6月30日の香港での池田―プリマコフ両外相会談で、プリマコフ外相は、領土問題は東京宣言に基づき解決を図ること、共同活動案については近く提案する旨を確認した。

    4. 貿易経済に関する政府間委員会の第2回会合が6月9日に東京で開かれた。
      1. ロシア側共同議長であるネムツォフ第一副首相は、テーマごとに報告し意見交換を行なうとのロシア側主張の方式とはまったく違って、サハリン石油ガスプロジェクトの免税問題は処理した、支払い遅延問題は9月までに処理する等々冒頭短時間に懸案の問題についてロシア側の対応を述べ、日本側を驚かせた。
      2. 今回の会合で日本側が力点を置いたのは、対ロ投資の促進、極東重視の具体化、ロシア支援とロシアの国際経済への統合であった。まず、対ロ投資の促進では、投資重点分野として燃料エネルギー、木材・水産、自動車・家電などをロシア側は挙げた。日本側からは、ロシアの内外投資促進の分野における日ロ協力構想「日露投資協力イニシアチブ」を提案した。デンバーでの日ロ首脳会談では、政府間貿易経済委員会で「イニシアチブ」の実行について検討することが合意された。「イニシアチブ」にある苦情処理・情報提供体制の整備について、ロシア側からは組織を発足させたとの報告があったが、機能の実行が重要である。なお、投資保護協定も検討課題にしてもよいのではないかと考えている。

    5. 極東重視では、政府間委員会の極東分科会を機動的に動かすこととし、分科会を極東で開催、地域の人を参加させることで合意した。ロシア側からは、民間の参加が必要との指摘があり、われわれも同じ認識を持っているが、果たして一堂に会したものとすべきか否か、一考の余地があろう。踵を接して官、民の会議を開くのもひとつの方法である。
      バイカル湖以東の開発計画である「極東ザバイカル長期発展プログラム」についても極東分科会で取り上げて協議することとした。ロシア側は、具体的で優先度の高いプロジェクト案件を整理して提出することになった。

    6. 対ロ支援等については、日本側が協力して設けた日本センターや中小企業センター、あるいは欧州復興開発銀行との協力になる「地域ベンチャー・ファンド」を活用して支援を進める等、改革支援の基本は変わらない旨表明した。国際経済への統合に関して、ロシア側からはAPECへの加盟について機会ある毎に日本の支援を得たいとの要請があった。

  3. 経済界へのお願い
  4. 貿易経済に関する日露政府間委員会は、民間の経済活動の環境整備に努めているが、ロシアは中長期的には経済分野でも重要な国であり、この点はご賛同していただけると思う。そこで、民間企業の方々に、ロシアに関心を持っているとの姿勢をぜひ見せていただき、できるビジネスから進めてほしい。また、ロシアを直接見ていただきたい。サハリンにもハバロフスク日本総領事館の支所を11月に開設すべく努力している。


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