経団連くりっぷ No.62 (1997年 9月11日)

環境安全委員会(委員長 辻 義文氏)/8月26日

メルケル・ドイツ環境大臣と地球温暖化問題等をめぐり懇談


環境安全委員会では、来日中のメルケル・ドイツ環境大臣を招き、温暖化対策を中心に、同国ならびにEUの環境政策と今後の展望について説明を聴取するとともに、種々懇談した。

  1. メルケル大臣発言概要
  2. CO2の削減問題は、日本やドイツのような工業国にとっては非常に解決困難な課題であると言える。しかしながら、経済成長につれCO2の排出量が増大するといったこれまでの構図は、技術の進歩によって崩れようとしている。

    ドイツでは、CO2の排出量を2005年に90年比で15〜17%削減することができると確信しているが、さらに、断熱材の普及や新型車の普及によって、2005年までに90年比で25%の削減を達成したいと考えている。

    CO2削減に向けた政策のひとつとして、エネルギー利用効率の向上を目的とする規制の導入を検討したが、官僚的で非効率であるとの批判を受け、産業界が自主的な目標を設定し、これが未達成であった場合にはじめて規制を導入することとした。この自主的取組みには19の産業団体が参加し、2005年でエネルギー利用効率を20%向上させるという目標を掲げている。私は、産業界が目標を達成できるものと考えている。

    EUの掲げた目標(EU全体で2010年に90年比で15%削減し、域内では差異ある目標を認めるもの)が公平でないとの意見があるが、気候変動枠組み条約の中に、EUは一締約国として記されており、CO2の削減にEUが一致して取り組むことが合意されている。さらに、条約には、CO2の削減を他の国と共同して行なっても良いとされている。加えて、EUは、例えば、排気ガス税を導入する際には、EUが一致して実施することとされている等、政策を統一化することができる。われわれは、まず一律削減があり、各国間で政策を統一化することが可能となった段階ではじめて差別化された目標を認めうるものと考える。今はまだ、差別化の目標を掲げる段階でない。

  3. 質疑応答
  4. 経団連側:
    わが国では、産業部門のCO2の排出が横ばいで推移する一方で、民生・運輸部門の排出が大幅に伸長している。ドイツでは、民生・運輸部門での排出削減をどのように実施するつもりか。
    メルケル大臣:
    一般家庭から排出されるCO2について、排出抑制を義務づけることは難しい。この問題に対応するために、政府としては炭素税の導入を図り、一般市民の省エネ努力を促したいが、炭素税は欧州全体で実施しないと意味がないと考えている。何らかのインセンティブ措置を講じ、断熱材の普及を促進したり、地域毎に適合した交通手段を利用するよう促し、物流の効率化を図る等して、民生・運輸部門でもCO2の削減にむけた取組みを進めたい。


くりっぷ No.62 目次日本語のホームページ