経団連くりっぷ No.63 (1997年 9月25日)

経団連提言/9月16日

APECの発展に向けて
−活動の効率化、集中化と民間の積極的参加の場を−


昨年のフィリピン会議でマニラ行動計画が採択され、「ビジョン」から「行動」の段階に入ったAPECでは、民間経済界の役割に大いなる期待が寄せられている。経団連ではこうした状況を踏まえ、提言をとりまとめた。以下はその概要である。

【APECの問題点と対応策】

APECの組織や活動、自由化の推進方法、民間参加のあり方など当面の課題について以下の諸点を提言をする。

  1. 組織・活動
    APECの活動が活発化するにつれて、組織・活動が、拡大・複雑化して全体像がみえにくくなっている。組織、活動の整理・簡素化への努力と戦略的、集中的な活動による、簡素で効率的な運営が求められる。

  2. 自由化の進め方
    APECでは、構成メンバーの多様性を考慮すると、非拘束性の原則を維持すべきである。しかし、自由化を確実に実行するために、各メンバーに対して、(1)スタンドスティル原則の遵守、(2)個別行動計画で自由化の最終ゴールに向けての具体的なロードマップの明示を求める。国内産業育成に重点を置く産業政策が実施される場合、その国は政策の透明性を確保し、背景や期限も明示すべきである。

  3. 民間参加のあり方
    民間の経済活動こそが地域経済の発展の源泉であるという認識のもと、一層民間経済界の意見を反映させるように努めるべきである。将来的には、OECDのBIACのような各国・地域の経済団体で構成される機関を設置し、ABACの活動の補完や民間経済界の意見を取りまとめ提言を行うことを、検討すべきである。

  4. 活動内容の発信
    APECの活動内容を、各国・地域の民間経済界に、積極的かつ頻繁に発信すべきである。インターネット・ホームページ等のデータの迅速な更新と充実化を求める。

【APECで集中的に取り上げるべき重点事項】

地域の持続的経済発展を図るため、民間直接投資を活用すべきであり、民活インフラの推進と知的所有権の保護を重点課題として取り上げることを提案する。

  1. 民活インフラの推進
    総論段階の議論を脱し、具体化を図るとともに、以下の3点の実現に力を入れるよう求める。
    1. 国際機関・各メンバー政府の協力強化によるリスクの適切な分担と低減
    2. 資金調達のための新たな枠組み作り
    3. 地場金融・資本市場の整備・育成

  2. 知的所有権の保護
    以下の3点の実現に力を入れるように要求する。
    1. 世界共通の知的所有権の実現
    2. 権利行使(エンフォースメント)の徹底
    3. 知的所有権の教育・啓蒙活動の促進


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