経団連くりっぷ No.63 (1997年 9月25日)

日本シンガポール・ビジネス・カウンシル設立会合(共同委員長 豊田章一郎氏)/8月29日

日本シンガポール・ビジネス・カウンシルを設立


豊田会長とシンガポール商工会議所連盟(SFCCI)のクエック・レン・ジョー会頭は、経団連会館において、両国経済界の協力関係を討議するため「日本シンガポール・ビジネス・カウンシル(JSBC)」を設立することで合意した。同カウンシルは、橋本首相が今年1月にシンガポールを訪れた際、ゴー・チョクトン首相と合意したのを受けて設立されたもので、開会セレモニーには両首相も出席した。以下は設立会合の概要である。
なお、同カウンシルとしては、第三国への共同ミッションの派遣、セミナーやフォーラムの開催などについて引き続き検討していくことになった。次回会合は、来年末までにシンガポールにおいて開催する予定である。

  1. 来賓挨拶
    1. 橋本龍太郎首相挨拶
    2. 日本とシンガポールは、アジア太平洋地域全体の発展のために、対等なパートナーとして協力する必要がある。両国の経済人が、二国間のみならず地域の経済問題について幅広く議論することは時宜にかなっている。
      両国関係は、貿易および投資の促進、経済協力などを通じて順調に発展してきた。また、近年、シンガポールは多国籍企業の地域統括本部の誘致、「成長の三角地帯」への積極的な関与、アジア地域における工業団地の開発等の野心的な計画を推進し、産業構造の高度化を進めている。このような分野において、今後、日本とシンガポールが協力できる可能性は大きいと思う。
      ビジネス・カウンシルを通じて、両国の経済関係を促進するとともに、地域全体に裨益する経済プロジェクトを積極的に推進してほしい。

    3. ゴー・チョクトン首相挨拶
    4. ゴー・チョクトン首相 今年1月の橋本首相との会談における合意を受けて、日本シンガポール・ビジネス・カウンシルが設立されることは、大変意義深いことだと思う。
      シンガポールと日本との間には、すでに緊密な貿易・投資関係があり、両国は経済的利益を享受してきた。シンガポール企業は日本企業に比べて規模は小さいものの、近隣諸国との間にネットワークを持っている。日本企業はこれを利用し、シンガポール企業と共同で第三国に対する投資プロジェクトなどを実施すれば、さらに利益を得ることができるだろう。
      ビジネス・カウンシルの場を活用して、両国の経済人が互いに関心のある分野について意見交換することで、共同プロジェクトの発掘や実施につながることを期待する。

  2. 基調講演
    1. 第1セッション
      「日本とシンガポールとの経済協力関係」
      立石信雄アジア・大洋州地域委員会共同委員長
    2. シンガポールは、日本企業を含む外国企業が、アジアに進出する際の事業拠点として重要な役割を果たしてきた。外に開かれたシンガポールの経済システムは、シンガポールの経済成長、並びに日本企業へのビジネス機会の提供という形で両国に大きなメリットを与えてきた。
      今後、周辺のアジア諸国でビジネスを展開するうえで、両国の協力は重要であり、人の交流を活発に行なうことが求められる。
      アジア地域が急速な経済成長を遂げるなかで、専門職などの人材は不足しており、法制度の整備も遅れている。そこでソフトウェア開発の分野において、海外から優れた人材を積極的に受け入れるとともに、ハイテク産業の知的所有権の保護に努めてほしい。
      これまで「日本市場は閉鎖的だ」との批判を受けることが多かったが、日本政府は構造改革のために6つの目標を掲げ、橋本首相のリーダーシップのもとで一層の市場開放を推進している。経団連としても、シンガポール企業が日本で自由に事業を展開できるよう構造改革に向けて努力したい。

    3. 第2セッション
      「日本とシンガポールを含む多国間関係」
      タン・コング・ヤム シンガポール通産省コンサルタント
    4. タイにおける土地投機とバブル崩壊に端を発して、アジア地域に通貨不安が広がっている。この現象は一時的だと思うが、中国やNAFTA(北米自由貿易協定)諸国の追い上げなどの環境変化により、投資先としての東南アジア地域の魅力が相対的に薄れつつあるのではないかと危惧する。
      ASEANや近隣諸国はこれまで高い成長率を続けてきた。安定成長を持続させるためにも、日本企業とシンガポール企業が協力して積極的な直接投資を行うことは重要である。とくに日本企業に対しては、ASEAN域内における生産分業体制の推進と、民活インフラ・プロジェクトへの積極的な参画を期待したい。


調印の模様
(後列左より、ゴー・チョクトン首相、橋本首相、
前列左より、クエック・レン・ジョー会頭、豊田会長)


くりっぷ No.63 目次日本語のホームページ