経団連くりっぷ No.63 (1997年 9月25日)

タイ政府代表団との意見交換会(座長 藤原常務理事)/9月2日

タイ政府代表団を招き、
産業構造高度化の方策等について意見交換


日タイ貿易経済委員会では、日タイ間の政府間協議である「日タイ経済協議」に出席するため来日中のピタック外務副大臣一行を招き、タイ経済の見通しや日タイ協力のあり方等について意見交換を行なった。会合では、まずピタック副大臣からタイ経済の現状について説明があった後、経団連側から、先般実施した「日タイ経済関係に関するアンケート調査」の結果を紹介し、意見交換を行なった。

  1. タイ側発言要旨
    1. 経済回復に全力
      タイは、現在の経済の危機的状況を克服できる。IMFの指導により、経常赤字を本年はGDPの5%内に、来年は3%内に抑えるとともに、インフレ率も7〜8%を超えないよう努める。今後2年ほどでタイ経済は回復するだろう。

    2. 投資環境整備に引き続き努力
      政府は今後も、投資環境の一層の改善に努める。今回の一連の変動で、特に自動車産業は大きな影響を受けている。そこで先般、政府として何らかの施策をとるよう工業大臣に申し入れた。また、外国企業法についても、改善を申し入れている。

    3. 人材育成・インフラ整備予算の確保
      財政均衡達成のため、政府は歳出削減策を打ち出したが、人材育成関連の歳出は削減しない。インフラ整備の費用についても極力削減幅を小さくする。人材育成とインフラ整備はタイ経済の発展のために不可欠と認識しており、企業が研修など人材育成に要した費用を法人税から控除できるよう検討している。今後は、労働者の技能向上による生産性の向上にも力を注ぐ。そのため、全国に労働者のための技能研修センターを設置している。また、ISO9000を充たす工場の数を増やして品質向上に努めている。

    4. 日タイの協力関係強化を期待
      タイには6,000万人規模の市場があり、近隣諸国の市場にも容易にアクセスできる。政府も安定している。天然ガスなど資源にも恵まれている。今後も継続してタイに投資してもらいたい。また、メコン河流域開発等で、日タイの協力関係をさらに強めていきたい。

  2. 経団連側発言要旨
    1. このような状況になることは、不動産バブル崩壊の兆候が現れた1992年頃から予想できた。バーツ切下げによって、タイの輸出が増えることを期待する。タイは日本にとって重要な製造拠点であり、今後は輸出拠点としても重要になる。

    2. 日本企業は、その国の市場規模だけでなく、製造コストや人材の豊富さ、インフラの整備状況等を総合的に勘案し、他国と比較しながら投資先を決定している。タイも国としての競争力強化に一層努めてほしい。特に、いわゆるサポーティング・インダストリーや人材の育成が急務と思われる。


くりっぷ No.63 目次日本語のホームページ