経団連くりっぷ No.63 (1997年 9月25日)

外国公務員贈賄問題ワーキング・グループ(座長 塩見健三氏)/9月10日

年内妥結を目途に贈賄防止条約交渉が開始


OECDは、米国の主張を受けて外国における公務員への贈賄の防止に取り組んでおり、こうした贈賄行為に対する各国国内法による処罰を確保するための条約を締結すべく、本年末の妥結を目指して7月に交渉を開始した。本件の重要性に鑑み、経済界としての意見を取りまとめ、同交渉に反映させるべく、貿易投資委員会の下に外国公務員贈賄問題ワーキング・グループを設置した。以下は第1回会合における通産省による説明の概要である。

  1. 急ピッチで進む条約交渉
  2. 米国はロッキード事件等を背景として77年に海外腐敗防止法を制定した(88年改正)。しかし、米国企業が海外での商取引に際し不利にならないようにするためには、他国にも外国公務員への贈賄に対する処罰、贈賄の損金不算入を求める必要があると考え、OECDにおける取り組みを積極的に推進してきた。

    OECDは本年5月の理事会で、98年中に各国がこうした贈賄行為を処罰するための法案の成立を図るよう勧告、このための条約交渉を年内妥結を目途に開始することを決定し、これを受けて7月7日〜9日に第1回条約交渉を実施した。各国とも本年末の期限までに条約を完成させるべく、早急に合意にいたる必要があるとの態度で交渉に臨んでいる。すでに事務局より第2次条約案が提示されており、今後、10月に第2回交渉、11月に第3回交渉を行ない、12月上旬の交渉妥結を目指す。

  3. 条約案に関する主な論点
    1. 犯罪の構成要件:
      この条約は、贈賄行為のみを対象とし、収賄側は対象としない。海外子会社による贈賄行為であっても、親会社が電話、ファクシミリなどで直接に贈賄を指示するなど、実質的な責任を負う場合には罪に問われる。ライセンスやビザの発給、通関等の公共サービスを受ける際に慣習化している公務員への支払い(facilitating payment)は贈賄の定義に含まれないと理解されているが、条文に明記するかは今後議論する。また、わが国をはじめ一部の国では、法人に刑事責任能力を認めないため、法人を犯罪の主体とすることにつき議論がある。

    2. 制裁:
      贈賄を通じて得た商取引から獲得した利益を没収することが提案されている。わが国としては、利益の範囲を特定することが困難であり、国内法上、他の犯罪に関しても類を見ないとして、反対している。また、(1)との関連で、法人への刑事罰が困難な国については、民事罰・行政罰などの何らかの処罰を講じることが必要との意見が大勢を占めている。

    3. 告訴:
      他企業の贈賄行為により損害を受けた企業は、贈賄を行なった企業を当該国の検察当局に告訴することができる。告訴する資格を有するのは、非締約国の企業を含め、当該国企業であるか否かを問わない。告訴権の濫用の懸念について、これまでのところ特に議論されていない。


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