経団連くりっぷ No.64 (1997年10月 9日)

なびげーたー

NPO法案早期成立への期待

社会本部副本部長 安斎 洋一


NPO(民間非営利組織)の自律性確保と組織的基盤強化のためには、NPOが容易に法人格を取得でき、社会的認知を高められるようにすべきである。

多様性に富む活力のある社会を築いていくには、NPOの発展が不可欠である。また、NPOは企業の社会貢献活動に広がりをもたらす。わが国には、法人格を有する公益法人が25万程あるが、法人格のない多くのNPOは、社会的な認知を高めるために、出来るだけ簡単な手続きで法人格を持ちたいと考えている。現状では、事務所を借りるにも、銀行口座を作るのにも個人名義にせざるを得ない。NGOも法人格がないと、海外で駐在を認められなかったりビザが取りにくい状況にある。

「市民活動促進法案」が議員立法という形で与党3党から提案され、それに民主党が共同修正をして、6月6日に衆議院で可決された。参議院で継続審議になり、今臨時国会で審議されることになっている。

同法案は、市民団体が10人以上の会員と組織・書類を整えて都道府県等に申請すれば、3カ月以内に法人格が取れるという法案である。民法34条に基づく社団法人や財団法人を設立する場合に比べて、簡単に法人格が取れる。また、財団法人を設立する時のように多額の基本財産を準備する必要もない。

「市民活動促進法案」は、民法34条の特別法という位置づけになるので、一般法である民法の公益法人との棲み分けのために、いくつかの要件をつけざるを得なかった。例えば、同法案では市民活動の定義を保健・医療・福祉、国際協力、環境保全、社会教育等12の活動分野に限定列挙せざるを得なかった。この他、不特定多数の利益の増進に寄与することとか、報酬を受ける役員は全体の3分の1までまでといった要件がつけられている。

「市民活動促進法案」では法人の所轄庁は、法人の事務所が1つの都道府県内にある時は都道府県知事、2つ以上の都道府県にある時は経済企画庁長官となっている。その事務は都道府県への団体委任事務であり、法律の範囲内で都道府県が自主的に判断してよいことになっている。

「市民活動を支える制度をつくる会」という市民グループ(120団体が加盟)がこれまでに、相当な頻度で各党のNPO担当議員と意見交換を重ね、市民団体の要望をかなり法案に反映させることに成功している。NPO法案のもう1つの重要課題である寄付金税制の改革が残されているが、多くの市民活動団体は、まず法人格の取得を優先させて、「市民活動促進法案」が早く成立することを望んでいる。

経団連の社会貢献推進委員会では、専門部会で検討を重ねてきたが、法人格の付与によりNPOの社会的認知を高めることを優先的に考え、法案の早期成立をめざすべきであるという意見が有力である。


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