経団連くりっぷ No.64 (1997年10月 9日)

第30回東北地方経済懇談会/9月22日

東北地域の新たな発展に向けて


経団連では東北経済連合会(東経連)と共催により、標記懇談会を仙台市にて開催した。当日は、東経連からは明間会長をはじめ地元経済人約250名が、経団連からは豊田会長、那須・伊藤・樋口・今井・古川・辻の各副会長が出席し、「活力あるグローバル国家の建設と新しい東北の創造を目指して」を基本テーマに、行政改革をはじめとする構造改革の推進、東北の果たすべき役割などについて活発な意見交換を行なった。

  1. 東経連側発言
    1. 開会挨拶
      明間輝行 会長(東北電力会長)
    2. 政府は昨年来、景気は回復基調にあるとの認識を変えていないが、東北では、公共投資削減の影響や中小企業の景況感の改善の遅れなどから、いまだに景気回復を実感するまでに至っておらず、政府の判断はやや楽観的すぎるのではないかと考えている。
      また、改革の大きな流れは、地域自らの自己改革をも迫っている。従来の産業構造や古い体制を前提にした経済活動では、地域の発展は不可能である。東経連としては、東北ベンチャーランド運動や東北インテリジェント・コスモス構想を東北の産業振興の要として位置づけ、真に自立した地域経済を構築していきたいと考えている。

    3. 地方分権の推進に向けて
      友田 昇 常任理事(福島テレビ社長)
    4. 明治以来、欧米へのキャッチアップの過程で進行した、東京への一極集中と太平洋ベルト地帯への機能集積は、画一的な国土構造と中央への過度な依存心を生み出した。国から地方への権限移譲である地方分権の推進と官から民主導への転換を図る規制緩和の推進は、日本を再生し、地域を活性化するために必要不可欠である。
      地方分権の推進にあたっては、(1)地方への徹底した権限移譲を行なうとともに、地方財源の拡充に向けた税体系の抜本的見直しを図る、(2)市町村合併を通じて市町村の規模を適正化し、分権の受け皿づくりを進める等が重要であり、東経連としても、地方分権の推進に積極的に取り組む所存である。

    5. 財政構造改革と社会資本整備のあり方
      村松 巖 副会長(七十七銀行会長)
    6. わが国では、財政構造改革が喫緊の課題であり、公共投資基本計画の繰り延べが閣議決定されるなど、今まさに社会資本整備のあり方が問われている。他方、東北における社会資本整備はわが国においても低水準にあり、地域の発展の障害となっている。先般、当会会員を対象に行なったアンケート調査でも、約9割の会員が整備が遅れていると答えている。
      社会資本整備は、21世紀の豊かな国民生活やわが国の持続的発展のための基盤となるものであり、投資余力のある現在において積極的に進めるべきである。東経連としては、会員が一体となって論議を深め、基本的な考え方をとりまとめるとともに、必要な事業の優先順位の明確化に取り組んでいきたい。

    7. 産業構造の高度化に向けて
      齋川慶一郎 副会長(宮城県商工会議所連合会会長)
    8. 新規事業の振興を図る東北ベンチャーランド運動は、ファクシミリによるニュースレターの提供をはじめとする情報提供活動、ベンチャーランド奨励金の交付、活力ある経営者の育成を目指した曙塾の開催等を行なっている。また、東北インテリジェント・コスモス構想は、研究開発機能のコーディネート役を果たす(株)ICRの設立、大学等の研究者を主体とした学術振興財団の設立等の推進体制を整備し、独創的な研究開発を進めている。今後は、両者の関係を深めるとともに、東北における産業振興の要として位置づけ、将来を担う産業の育成に取り組む。

    9. 世界に開かれた地域づくり
      手島典男 常任理事(仙台ターミナルビル会長)
    10. 仙台空港は、国際旅客数の増加に伴い東北の拠点としてふさわしい条件を兼ね備えつつあり、福島空港では、日中航空協議において国際定期路線の開設が決定し、東北に4つ目の国際空港が誕生することとなった。
      東北の港湾は、新潟・八戸・酒田・仙台港などに国際航路が開設され、国際コンテナ時代を迎えているが、今後は、物流コストを引き下げ、国際競争力のある拠点港湾づくりに取り組んでいきたい。
      財政構造改革という課題もあるが、国際交流がますます盛んになる21世紀に向けて、国際交流拠点を整備していくことは、今後一層重要となろう。

    11. 広域交流圏の形成に向けて
      坪井孚夫 副会長(福島県商工会議所連合会会長)
    12. 東北地域では、青森、秋田、岩手の3県にまたがる「環十和田プラネット構想」、仙台、山形、福島の3都市を中心とした「南とうほくSUNプラン」など、いくつかの県境を越えた広域交流圏構想が打ち出されている。
      特に、当会が1995年に発表した「環十和田プラネット構想」に関して、環十和田プラネット広域交流圏推進協議会が本年2月に発足し、普及・啓蒙活動を実施するとともに交流・連携のための具体的施策を練っている。
      他方、このような広域交流圏や地域連携を推進していく上で、多くの課題が残されているが、東経連としては、引き続き、積極的に取り組んでいく。

  2. 経団連側発言
  3. 今井副会長が「規制緩和が実際に効果をあげるには、企業自らの取り組みが重要」、伊藤副会長は「財政構造改革をはじめとする諸改革の推進には、ここ数年が絶好の機会」、樋口副会長は「今こそ変革と創造の最大のチャンス。果敢に、新たなビジネスにチャレンジ」、那須副会長は「21世紀にふさわしい企業行動の確立」、辻副会長は「地球環境問題は、各国の産業界がそれぞれの立場でできることを最大限実行していくことが重要」、古川副会長は「大競争時代にふさわしい魅力ある地域づくりが不可欠」と訴え、最後に豊田会長が「自立した地域経済の構築に向けた、東北の主体的な取り組みを心強く思った」と締め括った。


くりっぷ No.64 目次日本語のホームページ