経団連くりっぷ No.64 (1997年10月 9日)

尾身経済企画庁長官との懇談会(座長 櫻井経済政策委員長)/9月29日

今後の経済運営、政策課題等について、
尾身経済企画庁長官と懇談


経団連では、新内閣の尾身経済企画庁長官を招き、今後の経済運営、その他政策課題について、懇談した。席上、尾身長官は、政府の姿勢を明確にすることで、企業、消費者の将来に対するコンフィデンスを高めたい、と強調した。

  1. 豊田会長挨拶
  2. この度、新内閣が発足したが、経済界としてもこの内閣が、六大改革をはじめ、法人税改革、規制の撤廃・緩和に積極的に取り組まれ、活力ある経済社会を実現されるよう期待している。

  3. 尾身長官発言
    1. 景況については、「足元のテンポは緩やかではあるが、景気回復の基調は継続していると認識している」というのが政府見解ではあるが、決して楽観できる状況とは考えていない。財政面のてこ入れは難しいが、規制緩和、土地流動化、税制改革等を打ち出していきたい。

    2. 経済構造改革を積極的に推し進め、民間活力を活かした経済の体質強化を図りたい。こうした政府の姿勢を明確にすることで、企業、消費者のコンフィデンスを高めたい。

    3. 経企庁としては、昨年12月に経済審議会から総理に建議された「六分野の経済構造改革」のフォローアップのためのワーキンググループを設置することを提案し、そこでの審議を通じて、建議の内容を拡大・深化させ、具体的な規制緩和策を盛り込んだ提言を行なっていきたいと考えている。

    4. 構造改革に役立つ規制緩和を一段と進めるため、インターネット等を活用した規制にまつわる問題点の指摘、意見・要望の受付を開始した。

  4. 経団連側発言
    1. 規制緩和の推進
      今井副会長/行政改革推進委員長
    2. 経済活性化のためには、企業側が規制緩和の成果を活用するとともに、さらに一段の規制緩和が必要である。経団連では、2000年末までの新たな実行計画と、その監視機関「規制緩和推進会議(仮称)」設置を柱とする新しい規制緩和推進体制についての提言をまとめた。提言の中では、例えば、民間企業の福祉分野への参入促進、具体的には施設介護サービス事業の全分野への参入、福祉サービスへのバウチャー制度導入等を要望している。これらの項目を含め、規制緩和の推進にご尽力いただきたい。

    3. 法人税の抜本改革
      古賀税制委員会共同委員長
    4. 経団連では、今年こそ税制の抜本改革を実現しなければならないと考えており、先般とりまとめた提言にもある通り、法人実効税率を少なくとも40%にすることを最優先に考えている。これを実現するためには、国税の法人税だけでなく、地方税を含めた法人課税全体としての負担軽減が不可欠である。また、課税ベースについては、国際的な潮流を踏まえて見直す必要があるとは考えているが、税率引き下げと課税ベース適正化は、独立の問題である。経済活性化のためには、税収中立ではなく、実質減税が必要である。引き続きその実現にご支援賜りたい。

    5. 土地の有効利用
      前田評議員会副議長/国土・住宅政策委員会委員長代行
    6. 土地に関するコスト高が、わが国の国際競争力の低下、産業の空洞化を招く要因となっている。地価税、土地の譲渡益重課の撤廃、建築基準法や借地借家法の見直し、担保不動産の証券化等を早急に実現していただきたい。また、「地価抑制から土地の有効利用へ」という国の政策転換を自治体に徹底すべきである。土地の有効利用のネックである虫喰い土地、不整形地の権利関係の整理、土地の集約化を行なっていくべきである。

  5. 懇談概要
  6. 尾身長官:
    1. 税制は、経団連会員企業のような世界レベルで進出先を考えている大企業に、立地選択してもらえるものにしなければならない。法人税改革もその一環であると理解している。財政状況は厳しいが、単年度でなく中長期的なバランスで考えていくべきだろう。
    2. 福祉・介護分野にも民間企業を参入させ、競争原理を導入することが必要である。
    3. 不良債権問題をはじめ、土地対策は、景気活性化の鍵と考える。農地転用問題も抜本的に見直したい。
    4. 情報通信分野等で今後どのような規制緩和が役立つか具体的提案を望む。
    5. 景気については、細心の注意を払っていく必要がある。わが国経済の先行きに対する不安感を拭い去り、企業、消費者のコンフィデンスを高めるよう努力していきたい。

    経団連側:
    1. 景気は、業種ごとまた企業ごとに格差があり斑模様である。判断を見誤らないようにしてもらいたい。
    2. 心理的な停滞感が大きい。社会心理を刺激するための対策(株価対策としての有取税撤廃等)を検討する必要がある。
    3. 円安による景気回復は他力本願といえる。自力回復のための方策(住宅分野の規制緩和等)を打ち出すべきである。
    4. 金融システムへの不信感を払拭するためにも、土地を市場に出すことが必要である。土地の流動化を阻む各種の足かせを、早急に外す必要がある。
    5. 行政改革を推進するためにも、景気の動向を慎重に見守っていくべきである。


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