経団連くりっぷ No.64 (1997年10月 9日)

農政問題委員会(委員長 宮内義彦氏)/9月10日

本間正義教授より
農政をめぐる政府の検討状況について聞く


政府は、食料・農業・農村基本問題調査会(以下「調査会」)を発足させ、1961年制定の農業基本法に代わる新しい基本法の制定に向けた検討を行なっている。また設置期限を本年12月に控えた行政改革委員会規制緩和小委員会(以下「小委員会」)では、最終意見の取りまとめに向け検討を行なっている。
そこで農政問題委員会では、調査会の専門委員と小委員会の主査を務めている成蹊大学の本間正義教授を招き、各々の検討状況について聞いた。また、当日は、併せて「農業基本法の見直しに関する提言」(案)の審議を行なった。

  1. 行政改革委員会小委員会における本年度の議論
    1. 価格政策の見直し
      行革委員会が昨年度に要望した、麦類の最低価格保証制度や生乳の指定団体制度の見直しについては、現在政府内で検討中であり、小委員会として引き続きフォローアップしていく。この他、豚肉の安定帯価格制度の運営等を行なう農畜産業振興事業団のあり方や、豚肉の差額関税制度とWTO協定との整合性等を内部での検討課題とした。

    2. 農業生産法人制度と農業の経営形態
      行革委員会の意見を受け、農水省は農業生産法人制度の見直しについて本年3月に検討結果をまとめたが、株式会社の農業経営への参入問題は両論併記に止めており、最終的な結論を基本問題調査会の検討に委ねている。株式会社に対しては農業への実質的な参入規制があると認識しており、その是正を図るべく、基本問題調査会の審議に小委員会の意見を反映させたい。

    3. 農協の独占禁止法適用除外問題
      独禁法は協同組合一般を適用除外にしているが、組合の連合会組織である「全農」のような大組織までも適用除外とすることには議論がある。しかし協同組合のうち農協のみ特別扱いすることには法技術上問題があることから、小委員会として取り上げることは断念した。

    4. 食糧法によるコメ政策の問題点
      食糧法により、コメの政府への売渡義務が廃止され、計画流通米と計画外流通米を区別する経済的意義はなくなった。にもかかわらず補助金により計画流通米を集めており、いまだに補助金誘導による計画経済的制度の色彩が色濃く残っている。しかし補助金行政は行革委員会の検討対象外である。
      また自主流通米価格形成センターの入札取引は市場メカニズムが不徹底であることから、本年度の論点公開項目に取り上げた。これに対し農水省は「自主流通米取引の改善の方向」を打ち出し、97年産米から実施されることから、多少改善が図られる。

  2. 基本問題調査会における検討状況
  3. 本年4月から検討が行なわれているが、各委員が意見を陳述する場となりがちで、実質的な討議が行なわれていない。今後、12月の第一次答申に向けて、論点を絞って議論を進めていくべきである。


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