経団連くりっぷ No.65 (1997年10月23日)

なびげーたー

日ロ経済交流の基礎固めを

国際本部副本部長 江部 進


さる7月24日、橋本首相は、「信頼」、「相互利益」、「長期的な視点」の3原則に立って日ロ関係を新たな協力に向けて改善していくことを明らかにした。

わが国政府は対ロ関係全般を促進する政策を進めている。橋本首相が打ち出した対ロ関係改善3原則はそのベースになるものであろう。エリツィン大統領はじめロシア政府首脳は、3原則表明を高く評価すると素早く反応した。来たる11月1〜2日には東京とモスクワの中間にあるクラスノヤルスク(東シベリア)で6月のデンバー会談に続く日ロ首脳会談が開かれる。ここで両首脳はノーネクタイで談論し、信頼関係を固めていく。経済協力も話題になろう。

日ロ経済協力を巡る環境は好転している。まず、エリツィン大統領の健康の回復、民主化の進展、チェチェン問題の沈静化、NATOの東方拡大問題の決着、加えてロシアの先進国首脳会議への参加と、政治の混迷が次第に薄れてきた。混乱の経済分野においても、インフレの沈静化、工業生産の減少の底打ち、市場経済に適応した有力な銀行・企業グループと経済人の登場、若手政府首脳による経済改革の果敢な推進と明るい材料が揃ってきた。

また、日ロ経済関係では、本年6月に第2回貿易経済政府間委員会に出席のため来日したネムツォフ第一副首相が、経済協力の障害除去と新たな協力への積極的な取り組みを示し、また懸案の商業債権支払遅延もほぼ解決の目処が立つなど明るい雰囲気が出てきている。サハリン島陸棚での大規模な石油ガス開発プロジェクトが動き出したことも心強い材料である。日ロ経済協力の当面の課題は、ロシアへの投資促進とロシア極東との経済交流の拡大である。これはネムツォフ第一副首相も指摘している。

11月初めの日ロ首脳会談に続き、11月19〜21日にはモスクワで日本ロシア経済委員会とロシア日本経済委員会の第3回合同会議が開催される。会議の基調となるテーマは、上記の「投資」と「極東」である。会議では具体的に掘り下げた討議を行なうが、日ロ経済協力においては政府間委員会との密接な連係が重要である。官民連携のもとに、「投資」ではロシアに環境整備をさらに促していくことがポイントであり、一方「極東」については大統領承認の同地域長期発展プログラムをベースに開発の方向と手順および日ロ協力の可能性について日ロ共同でグランド・デザインを描いてみることも協力前進のための一つの方策であろう。また、新しいロシアとの新しい民間経済界交流のあり方に知恵を出す必要もある。

低迷する日ロ経済関係発展への基礎固めのチャンスを逃すべきではない。


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