経団連くりっぷ No.65 (1997年10月23日)

チャワリット タイ王国首相歓迎昼食会/10月9日

経済・金融制度改革を進めるタイ


経団連を含む経済6団体では、わが国を訪問中のチャワリット・ヨンチャイユット タイ王国首相歓迎昼食会を開催した。会合には約100名の日本企業の代表者が出席し、根本日経連会長による歓迎挨拶に引き続き、チャワリット首相が概要下記のスピーチを行なった。


チャワリット首相
  1. タイ経済は現在、これまでにない困難な状況に直面している。しかしながら、タイにはダイナミックな民間部門が存在するほか、メコン河流域地域等へのゲートウェイとしての地理的優位性等の強みがある。こうした強みは、金融市場における問題の解決や国際競争力の強化に取り組む際の力となる。

  2. タイ政府は先般、世界銀行等の支援を得て、5分野からなる経済復興プログラムを打ち出した。その第1は、金融部門の改革である。外資が弱体化した金融機関の資本の過半数を所有することを10年間まで認めるなどの金融システムの包括的再建策を、10月15日に発表する。第2は、金融・財政政策の強化である。すでにわれわれは、付加価値税率を7%から10%に引上げ、公共部門の予算を削減した。また、今後2年間はインフレ率を5%前後に抑え、1998年までに財政赤字の対GDP比率を3%に削減する。第3は行政改革であり、官僚機構を改革し、国営企業の民営化を加速させる。第4に、国際競争力を強化するため、産業構造改革を行なう。そして第5は、環境プログラムの実施と、教育改革の実現である。

  3. 今年9月に日タイ両国の政府間で行なわれた第5回経済協議では、
    1. 人材開発や裾野産業への投資促進等を通じた、タイの競争力強化への協力、
    2. メコン河流域開発における協力推進、
    3. APECやWTO等の貿易投資イニシアチブの支援、
    の3点につき合意をみた。これにより、両国の協力関係の新次元が開かれたと評価している。

  4. わが国は、引き続き投資環境の改善に努める。他方、日本企業にも、以下の5点をお願いしたい。
    1. タイを輸出拠点としてもっと活用してもらいたい。
    2. 在タイの日系メーカーには、部品等の現地調達比率を高めて輸入削減に協力するとともに、技術協力・技術移転を進めてもらいたい。
    3. 商社には、タイ製品の購入とタイ製品の輸出市場拡大に努めてもらいたい。
    4. タイへの最大の貸し手である日本の金融機関には、短期債務の返済繰り延べや新規融資における融通をお願いしたい。
    5. 日本人観光客の一層の訪タイを願いたい。

  5. タイは2000年3月の国連貿易開発会議(UNCTAD)のホスト国を務める。その時に、経済的困難を経験しながらも2、3年のうちにそれを乗り越え、一層強い国になったことを世界に対し示したい。


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