経団連くりっぷ No.65 (1997年10月23日)

アハティサーリ フィンランド大統領歓迎昼食会/9月25日

フィンランドの経済政策と今後の対日関係について


経団連では、9月に訪日したアハティサーリ フィンランド大統領を歓迎し、昼食懇談会を開催した。席上、大統領はフィンランド経済が安定成長の軌道にあることを強調し、わが国との経済関係強化に強い期待を表明した。
以下は大統領のスピーチの概要である。


アハティサーリ大統領

  1. アジア最大の貿易相手国日本への期待
  2. 日本はフィンランドにとって、アジア最大の貿易相手国である。両国の貿易は、特に1993年以来急速に拡大している。1994年から1995年にかけては、フィンランドの対日輸出額が倍増した。日本への輸出に関しては、これまで森林産業分野の商品の輸出が中心を占めていたが、1990年代半ばには電気通信関連機器の輸出が著しく伸びた。
    今回の日本訪問中に、皆様方と共に、両国のさらなる貿易の拡大を図る道を見い出せると信じている。フィンランド外国貿易協会は、今週(9月21日から27日まで)を「ビジネス・ウィーク・イン・ジャパン」と定め、新しい分野の協力とビジネスパートナーを見出すためのビジネスセミナーを東京と大阪で開催した。フィンランド企業は、すでに成果をあげつつある貿易製品に加え、環境技術、高齢者介護などの分野における新たな関係の可能性を見出すことを希望している。
    ここ数年来、私達は日本市場における規制緩和の進捗状況を、大変満足しながら見守ってきた。3年にわたる規制緩和の施策によって、フィンランド企業も日本市場でのより良い足がかりをつかむようになってきた。現在のより自由な貿易施策が引き続き行なわれることを希望している。

  3. 安定成長軌道に乗り良好な経済
  4. フィンランド経済は最近、1990年代初頭に直面した深刻な景気後退より脱出し、おおむね急速な輸出増加に基づく安定成長軌道に乗っている。これは、競争力を高めるため産業界が行なった事業の再編成、また研究開発への継続的な投資の結果によるものである。またフィンランド企業は、急速に国際化を図ることによって、グローバリゼーションの要件も満たしている。
    フィンランドのGDP成長率は、今年4.6%の成長が予測されており、これはOECD諸国中、最も高いグループに属している。インフレ率は約1%、経常収支は黒字であり、その他の指標もフィンランド経済が正しい軌道上にあることを示している。
    ここ数年の最大の問題は、高い失業率である。最近は減少傾向にあるものの、改善速度は緩やかであり、社会財源の大幅な負担要因ともなっている。失業はすべての先進工業国に共通の問題である。

  5. EU拡大に向けて積極的取り組み
  6. フィンランドは1995年以来、EUに加盟している。これにより、フィンランドの存在を国際社会においてアピールすると同時に、日本をはじめとした域外諸国との貿易および協力関係の確立を図る新たな機会が生じることにもなった。
    EU自体も、経済通貨同盟(EMU)の第3段階の実施によるさらなる統合に向けて、大きく動こうとしている。EMUは経済成長、競争力および雇用を促進するためのひとつの方法である。加盟国は低いインフレ率を維持し、公共支出を抑えることを要求されるため、ヨーロッパにある企業は、競争が激しくなる世界市場において、ますます成功する可能性が高くなるであろう。
    フィンランドにとって、EMU加盟は間違いなく良い影響を及ぼすと考え、1999年の第1の「波」に乗ろうと考えている。最終的な決定は、来年春、議会で行なわれるが、私は参加が決定されるものと信じている。
    EUが直面するもうひとつの大きな課題は、“拡大”である。フィンランドは、EU拡大がヨーロッパの安定や安全、また豊かさに繋がるものと考えるため、拡大を積極的に捕らえてきた。候補となる国々は自国経済を加盟条件に調整するための移行期間を要求するため、交渉過程は確実に長期にわたることになるであろう。フィンランドは1999年後半期のEU議長国として、積極的に加盟交渉を進めていきたいと考えている。
    フィンランドのEU加盟によって、第3国との関係を確立する新たな経路や方法ができた。ここ数年ヨーロッパは、アジアとの関係を積極的に確立しようと動き始めている。バンコクで始まったアジア欧州会議(ASEM)のプロセスは、参加国を急速に親密にさせ、多くの共同プロジェクトを始動させた。フィンランドは、諸外国との包括的な関係の発展が重要であると認識する一方で、経済協力を高めることが、具体的な成果を上げる最善の方法であるとも考えている。
    また、ASEMビジネス・フォーラムで並べられている民間部門への協力も重要であると考えている。フォーラムを通じ、貿易や投資の障壁を取り除く施策についての提言や情報が得られることになることであろう。
    日本が経済協力、それも特にASEMの枠組みで経済協力の促進や、ヨーロッパとアジア経済の相互協力(シナジー)のための機会の提供に積極的な役割を担っていることをうれしく思う。各国間の相互協力の為の領域はまだまだたくさんあるので、私たちは一緒にこの共通の目標に向かって進まなければならない。


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