経団連くりっぷ No.65 (1997年10月23日)

堀内通産大臣ならびに通産省幹部との懇談会/10月1日

経済構造改革の推進に向けて堀内通産大臣と懇談


経団連では、堀内通産大臣就任を機に、堀内大臣をはじめ通産省幹部を招き、経済構造改革をはじめとした諸改革の実現に向け、規制緩和の推進や法人税制改革を中心に、通商産業政策のあり方について懇談した。通産省側からは大臣、政務次官をはじめ幹部19名、経団連側からは豊田会長、齋藤評議員会議長、関係副会長、委員長など34名が出席した。

  1. 堀内通産大臣挨拶要旨
    1. わが国経済の動向について、景気回復の基調は途絶えていないと思われるものの、消費税率引き上げの影響や一部業種における生産調整の動き等もあり、足元の回復の動きは必ずしも楽観できる状況にはない。政府として、景気動向を注視しつつ、引き続き適切な経済運営に努めたい。

    2. 内需・民需主導型の経済成長を確かなものとするため、経済構造改革を強力に推進していく必要がある。先日、通産大臣を拝命した際にも、総理から、「経済構造改革を深化・加速化するように」との指示を受けている。
      経済構造改革の実現のため、規制緩和を通じて高コスト構造の是正を図るとともに、新規産業の創出のための環境整備に尽力していく必要がある。また、本年5月に閣議決定した「経済構造の変革と創造のための行動計画」のフォローアップを年内に行ない、さらなる新規施策の追加や計画の前倒し実施等にも積極的に取り組む。

    3. わが国経済の活性化を図るため、欧米先進諸国に比べて10%ポイント程度高いわが国法人税の実効税率を、国税・地方税ともに大幅に引き下げるとともに、併せて、課税ベースの適正化を図っていく必要がある。
      課税ベースの適正化については、多少の痛みを伴うものであっても、経団連が一丸となって、経済の活力を取り戻すとの強い意志をもって臨んでほしい。

    4. 地球温暖化の問題について、本年12月に京都で開催されるCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)の成功に向けて、議長国であるわが国が世界をリードしていく必要がある。自主行動計画の策定など、CO2排出量の削減に向けた経団連の前向きな取組みを高く評価している。通産省としても、引き続き産業界の協力を得ながら、省エネルギー・CO2削減対策を検討していく。
      CO2削減目標について、実態から遊離した形で、大幅な削減を数字レベルで求める声がある。現実的な対策によって達成しえない努力を強いる声に対しては、経団連としても、率直に意見を開陳し、国内世論が地に足のついたものになるよう、努力してほしい。

  2. 経団連側発言
  3. 以下の10項目について、出席の関係副会長、委員長より、経団連の考え方を説明し、その実現方を要望した。
    1. 規制緩和の推進
    2. 法人税制の抜本改革
    3. 社会保障構造改革の推進
    4. 地球温暖化問題への対応
    5. 当面の対外経済関係の重点課題
    6. 国土・土地政策の推進
    7. 電子商取引の基盤整備
    8. 企業倫理
    9. 新産業・新事業の育成
    10. 科学技術行政システムの再構築

  4. 堀内通産大臣応答要旨
  5. 規制緩和に終わりはない。本年12月に行政改革委員会の設置期限が切れるが、現行の機能等の見直しを行なった上で、同じような第3者機関を設置していきたい。
    諸外国との競争環境を整備するため、わが国の法人税負担を欧米諸国と同レベルに引き下げるべきである。一度に同レベルまで引き下げられなくとも、スケジュールを立て、実現の見通しを提示することが必要である。法人税率の軽減問題は経済構造改革の一環として進めていくことが基本であるが、同時に景気対策にもプラスになると考える。税制改正にあたっては、レベニュー・ニュートラルでは問題である。ただし、構造改革は痛みを伴うものであり、いわば保護されてきたものの見直しも併せて行なう必要がある。

  6. 渡辺事務次官ほか通産幹部応答要旨
    1. 規制緩和の推進は経済構造改革の中心的な課題である。本年5月に閣議決定した「経済構造の変革と創造のための行動計画」のフォローアップを年内に行なうべく、先日開催された閣僚懇談会で各省の協力を求めた。
      規制緩和が景気の刺激にも役立つという認識が自民党内で生じてきており、その観点も含め、規制緩和に係る検討を加速化する。

    2. 地球温暖化問題の取組みについて、現在2つの作業を行なっている。
      第1は、日本国内における、CO2排出量の削減見込みの積み上げ作業である。環境庁は、わが国のCO2排出量を2010年までに90年比マイナス7%程度削減することが可能であると表明しているが、通産省は90年レベルまでの引き下げでも難しいと考えており、両者の間に大きな開きがある。現在内容を詰めているところである。
      第2の作業は、COP3の議長国である日本として、各国に提示する案の検討である。数値目標の設定水準と途上国の扱いが問題となっている。

  7. 自由討議
  8. 経団連側:
    最近、内需の動向が日に日に悪くなっていると感じている。景気問題について、政府として真剣に検討しても良い時期に来ている。ぜひよろしくお願いしたい。

    堀内通産大臣:
    景気動向について、通産省では、かなり前から真剣に注視している。これまでのように、対処療法的に公共投資を増額することはできない。いかに効果的な対策を講じるかを考える必要がある。
    中小企業の非製造業については、すでに中心市街地の活性化問題として、中小企業庁を中心に具体的な検討を行なっている。このほか、規制緩和の推進や法人税・有価証券取引税などの税制問題に関する検討を加速化し、これらの実現の見通しを早めに示していきたい。


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