経団連くりっぷ No.65 (1997年10月23日)

OECD諮問委員会(委員長 行天豊雄氏)/10月14日

OECD活動の現状と展望などにつき
谷口 前OECD事務次長と懇談


先ごろ帰国した谷口前経済協力開発機構(OECD)事務次長(在任 1990年〜96年)を迎え、OECD活動の現状と展望、ならびにOECDからみたBIACの評価について説明を聞くとともに意見交換を行なった。
谷口前事務次長は、OECDは今以上に力を発揮できるだけの優れたリソースを持っており、米国、日本をはじめとする加盟国も、BIACも、もっと積極的にOECDを使うべきであると述べた。

  1. エコノミストの老齢化
  2. 日本がOECDに加盟した1964年以来、OECDの機構、活動は、環境問題と対域外国関係が加わったことを除いて、ほとんど変化していない。事務局は優秀かつ経験豊富なエコノミストを擁し、質の高い研究を誇ってきた。しかし近年、これらエコノミストの老齢化、研究のルーティン化が、世界経済の変化への対応を阻む要因となっている。そのため、かつては経済予測、経済分析等の質において圧倒的優位を誇ったOECDであるが、近年、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、さらには民間研究機関等が台頭するなかで、優位性を失いつつある。

  3. アイデンティティーの危機
  4. 北米自由貿易協定(NAFTA)や北大西洋条約機構(NATO)に絡む米国の政治的思惑を背景として、94年以来、メキシコ、東欧3カ国が加盟したことにより、OECDの「先進国クラブ」的性格が急速に崩れつつある。OECDは、グローバル化のなかで域外国との関係強化を迫られる反面、これがアイデンティティーの危機を招くというジレンマを抱えている。

  5. 米国のOECD離れ
  6. 米国にとり、欧州地域の国際機関のなかでのOECDの優先順位は、NATO、国際原子力機関(IAEA)、世界貿易機関(WTO)に次いで4位に過ぎない。すでにOECD開発センターからは脱退した他、拠出金の削減等を通じOECDへの関与を低下させている。米国は新たな問題を提起する能力に抜きんでており、唯一、OECDを変えることができる国である。OECDの存続は、米国をはじめとする加盟国がいかにOECDを「使う」かにかかっている。OECDには、加盟国にその意思さえあれば、それに応えるだけの優れたリソースが存在する。

  7. BIACへの期待
  8. OECDのエコノミストは経済の現実を知らず、ペダンティックな議論に陥りがちである。したがってBIACには、より批判的なコメントを発信し、ますます大きな役割を果たしていただきたい。特に、経済のグローバル化の最先端にいる立場から、OECDに刺激を与えて活性化を促すことを期待している。


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