経団連くりっぷ No.65 (1997年10月23日)

中東・アフリカ地域委員会(委員長 笠原幸雄氏)/10月2日

シュトラウス南ア財団会長との懇談会を開催


南アフリカ共和国では、94年にマンデラ政権が誕生して以来、人種融和と経済開発に積極的に取り組んできている。白人系財閥企業を中心とし、南ア経済界を代表する南ア財団(South African Foundation)のシュトラウス会長(スタンダード銀行投資会社会長)一行が来日したことを機に、南アおよび南部アフリカの政治・経済情勢について意見交換した。
以下はシュトラウス会長の発言要旨である。

  1. 新しい南ア財団
  2. 本年夏、アパルトヘイト廃止を行なったデクラーク元大統領が引退を表明した。これも、94年にマンデラ政権が誕生して以来の大きな政界再編の流れの一つであると理解している。そのような時代にあって、南ア経済界を代表する南ア財団としては、今後も政権党(ANC)の政策運営には協力していくが、政策がビジネス環境を悪化させる可能性がある場合には、反対の声を出していく。
    当財団は、アパルトヘイト政権下の1958年に発足以来、対外広報活動に従事してきたが、本年夏の組織改正を機に、対内的な政策提言と対外的な友好関係を促進する経済団体に生まれ変わった。現在は、南アの国際的な企業50社と、欧米系の多国籍企業12社によって構成されているが、近々、南アに進出している日本企業も会員に迎えたいと考えている。経団連とも交流を深めたい。

  3. 南アの投資環境
  4. 南アの1人当たりGDPは約3,500ドルだが、黒人層の大多数と、南部アフリカの周辺国の1人当たりGDPは、500ドルを少し上回る程度に過ぎない。しかし豊かな資源と、欧米式の法制度、良好なインフラ、市場原理の徹底等、投資対象としての魅力は高い。いずれ日本企業もアフリカに製造拠点を設けることになろうが、南アは、その基地として最適であると自負している。
    もちろん問題がないわけではない。たとえば治安問題に加え、政策の継続性や民営化の遅れ、財政問題等もある。労働市場も硬直化しており企業単位の労使交渉は難しい。しかし、これらは早晩改善されよう。むしろ当面の大きな問題は人材不足である。ANCは、国あるいは地方レベルの行政機構にANC幹部を登用したが、彼らには経験がなく、最善の政策をまとめても、実行に移されていない。

  5. 日本企業の対南ア投資に期待
  6. 今後、南アや南部アフリカでは、大規模な民活インフラプロジェクトが多数立ち上がる。日本企業にも多くの参加の機会がある。94年以降、英・独・米・仏・マレーシアの企業が南アに進出してきているが、日本企業の投資は既存の足場を固めるための投資であり、大規模な新規投資ではなかった。南アがこれからも期待される水準での成長を維持するためにも、また南ア経済を世界経済に組み込んでいくためにも、日本企業の積極的な投資を求めたい。


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