経団連くりっぷ No.65 (1997年10月23日)

社会貢献情報交流専門部会(部会長 加藤種男氏)/10月7日

寄付したNPOには情報開示を求めよ


玉の肌石鹸(株)の三木晴雄社長から同社の社会貢献活動について説明を聞くとともに、NGOや市民活動団体をはじめとするNPOへ寄付する際の考え方などについて意見交換を行なった。

玉の肌石鹸は明治25年創業で105年目を迎える化粧石鹸主体の企業である。墨田区に拠点を置いているが、私が4代目の社長である。私は、利潤追求はあくまで手段であり、経営の最終目的ではないと考えている。そのため、とくに営業成績、売り上げ目標を過度に追求することはやめ、定年制も設けていない。社会貢献活動も、当社の経営理念を具現化する手段と考えている。

当社では、山谷のホームレスにカイロを配る活動を行なっているほか、税引き後利益の約1割を目安に寄付を行なっている。寄付については、貨幣価値が高くなり、効果的な寄付ができる海外への支援を重視している。

また寄付する場合には、一回限りではなく継続的な支援を大事にしている。その際、当社が寄付を行なった団体が会計報告をしっかり実施しているかどうか、また寄付金の使途を明確に報告してくるかどうかを重視し、それ以降の寄付先選定の基準としている。いろいろな団体と長く付き合っていると、意外にも公的に信用を得ている団体の方が草の根団体に比べて寄付を受けた後に会計報告をしてこない場合が多い。日本の寄付の場合、その使われ方を精査せず、自己満足の支援を行なってしまう傾向があるのではないか。これは税金の使われ方にあまり関心を向けない精神構造にも関係している。社会貢献基盤整備の基本的な問題として、日本の税体系を見直す必要もあろう。

寄付を集めることと、寄付金を有効に利用することは別問題である。寄付先を選定する時には一種の勘も必要になってくるが、当社では、本当に役に立つ支援を実施しているいくつかの財団やNGOと連携して寄付を実施している。

また、個人的には、一種の宗教を背景に持っている団体かどうか、つまり、はっきりした原則をもって活動している団体かどうかを寄付先選定の判断基準にしている。

当社で社会貢献活動を実施する際に、社会貢献活動の重要性や長期的な企業経営とのかかわりについて繰り返し社員に説明した。幸い、社員は社会貢献活動を実践している当社に所属していることに対して誇りを持ってくれたようだ。いろいろな面で副次的な効果も出てきている。

また、自らが行なっている社会貢献活動について情報開示をすることは大事であるが、当初から広報・宣伝を目的にした活動は決して長続きしないと考えている。


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