経団連くりっぷ No.65 (1997年10月23日)

WTOスタディ・グループ(座長 櫻井 威氏)/10月9日

WTOの重要課題とわが国の対応


WTOスタディ・グループでは、通産省の福井通商協定管理課長より、WTOの発足の意義、現状および今後の課題等について説明を聞くとともに意見交換を行なった。

  1. WTO発足の意義
    1. WTOの発足により、モノに加えサービス(GATS)、知的所有権(TRIPS)も包含されるなど、ルールの対象が拡大した。

    2. 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定では、機能、構成、事務局、予算・分担金、意思決定、加入が規程され、国際機関としてのWTOが発足した。

    3. 紛争解決手続きについては、パネル設置要請からパネル報告書の採択にいたるまでの手続の自動性・迅速性が確保された。

  2. 現状と課題
    1. ビルト・イン・アジェンダの実施
      原産地規則、TBT、紛争解決手続、TRIM、TRIPS等の見直しや、サービスや農業の自由化交渉を着実に実行していくことが必要である。

    2. さらなる自由化
      すでに、基本電気通信協定(97年2月締結、69カ国参加)と情報技術協定(97年7月発効、43カ国参加)が実現した。情報技術協定については、参加国および対象品目の拡大、非関税障壁分野の問題等について今後も話し合いが行なわれる。
      金融サービス交渉については、本年末の交渉合意を目指して協議が続けられているが、タイの通貨危機で東南アジア諸国が懐疑的になっている。
      環境関連機器が新たな分野別自由化品目として取り上げられる可能性があるが、環境関連機器の定義を明確にする必要がある。分野別交渉は、これからの成長が期待される新産業になる可能性が高い。

    3. ルールの対象範囲の拡大
      「貿易と競争」ならびに「貿易と投資」の作業部会では、1999年の閣僚会議まで2年かけて検討を行なっていく。

    4. 加盟国の拡大
      中国、台湾、ロシア等の加盟を控えている。中国の加盟は来年5月の第2回WTO閣僚会議までに実現するかどうか、今後の情勢を見守る必要がある。わが国は遅くとも2000年までには加盟を実現すべきとの立場を取っている。

  3. その他
    1. 包括的交渉に関する議論が始まりつつある。日欧は包括的交渉に前向きだが、米国は否定的である。本件は、1999年に行なわれる閣僚会議の重要テーマとなろう。

    2. 欧米のアンチ・ダンピング措置はわが国企業にとって重要な問題である。スタンダード・オブ・レビューに関する具体的事例はこれまでのところないが、わが国政府としては、審査基準の一般化について検討していく必要があると認識している。


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