経団連くりっぷ No.65 (1997年10月23日)

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阪神・淡路大震災の被災地から


1995年1月17日から1000日が過ぎた。神戸市の中心部、元町の商店街には週末ともなると、人がどっと繰り出し、ポートタワーから街を眺めると、建築中のビルが目立ち、復旧、復興の力強さを感じさせる。

実際、地域経済に大きな影響を与える神戸港は、今年3月に港湾施設が完全復旧し、輸入額は4月以降4カ月連続で、輸出額は4月、5月と連続して、震災前(94年)の水準を上回った。大手企業を見る限り、甚大な被害を受けた鉄鋼業をはじめ、製造業は震災前の水準に復旧しており、大型小売店の販売額なども、概ね震災前の水準近くまで回復している。

しかし、規模、業種、地域により復興状況も二極分化している。被害の大きかった長田区、須磨区では、震災前には地場産業であるケミカルシューズ関連製造業に約17,000人が従事していたが、震災後は約10,000人に減少し、ケミカルシューズの生産額は、震災前の6〜7割程度に止まっている。淡路島の粘土瓦も、震災によるイメージダウンが響き生産量が約7割の水準に止まるなど、いまだに震災前に戻っていない。商店街・小売店舗についても、仮設店舗を含め営業している店舗の割合は、神戸市臨海6区内で約8割の水準に止まっており、厳しい状況が続いている。

回復が進んでいない分野への支援策として、兵庫県、神戸市などでは、当面の資金融資・負担軽減や賃貸工場など操業の場の確保、当面の需要確保に向けた運動の展開などに取り組んでいるが、震災の直接被害に加え、被災地の区画整理、都市再開発の調整、さらには、震災以前からの問題であった海外製品との競合や担い手不足の問題などもあって、完全復興への道のりは遠い。

また、兵庫県、神戸市では、復興の遅れている地域の区画整理や市街地再開発を支援、推進する一方で、産業構造の転換に対応した新規産業の育成に向けたエンタープライズゾーン構想の推進に取り組んでおり、ポートアイランドII期にあるゾーン内に立地する一定の要件を満たした企業には、県・市の条例で地方税の軽減、各種補助金や低利融資などによる支援を行なっている。

経団連では、こうした取り組みを全国の地域振興のモデルケースとして支持すると同時に、地元のみならず国の思い切った税制優遇、規制緩和を求めている。今後とも被災地の復興に向けた、地元の前向きな取り組みを支援していきたい。


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