経団連くりっぷ No.66 (1997年11月13日)

なびげーたー

法人税改革をめぐる争点

経済本部長 遠藤 博志


法人税改革は大きなヤマ場を迎える。法人税改革の重要性は合意されているが、その方向をめぐりいくつかの争点がある。

法人税改革は平成10年度税制改正において方針が決定される。自民党税制調査会における本格的論議は11月に開始され、12月中旬に税制改正の大綱がまとめられる。

法人税改革をめぐってはすでにいくつかの争点が明確になっている。

第1は、平成10年度における法人税率の引き下げ幅である。大蔵省は最大限2.5%といい、経団連は5%を主張している。大蔵省は戦後の最低レベルが35%で、米国の法人税率も35%であるからというが、国際的には30〜33%のレベルに収斂しつつある。また2.5%のみの引き下げでは、実効税率は現行の49.98%から約47%に下がるのみである。

第2は、実質減税か税収中立かである。大蔵省は税収中立に固執するが、経団連は5,000億の実質減税を主張している。大蔵省は財政構造改革期間中の減税は難しいというが、経済活性化の観点からは実質減税としなければ意味がない。経済構造改革としても、当面の景気対策としても法人税改革は重要である。

第3は、課税ベースの拡大の規模とその期間である。経団連では引当金をはじめ相当の規模の拡大(適正化)が必要とみており、これを4年で取り崩し、その後は実質減税とするプログラムを描いている。これに対し、大蔵省は6年の経過期間を考えているようである。これでは税率引き下げの効果が出てくるのは7年目からということになり、税制改革の実効はかなりの期間出てこないことになる。

第4は、国税・地方税を含めた法人税改革のプログラムの作成である。経団連は、国・地方を通じた実効税率を10%引き下げるべきであるとして、第1弾を平成10年度に法人税を中心に実施し、平成12年度に地方税の改革を中心として第2弾を打ち出すことを求めている。政府サイドでは大蔵省が前述のように2.5%引き下げのみを掲げているのみで、自治省からは何ら提案もない。経団連としては、法人事業税(税率12%)を大幅に(例えば6%に)引き下げ、その代りに地方消費税を引き上げることが適当であると考えている。これに対し、事業税の外形標準課税化が浮上してくるのではないかとの見方がある。有力な方式として加算型付加価値額があがっているが、付加価値の中に占める賃金の割合の大きさ(平均7割)を考えると賃金税となりかねない。したがってこの案に対する経済界の反対は極めて強い。

以上が法人税改革をめぐる主な争点である。大蔵省は11月5日に課税ベースの拡大案を打ち出すものとみられる。これに対抗して経団連の考え方をとりまとめ、強力に関係方面に働きかけていく必要がある。


くりっぷ No.66 目次日本語のホームページ