経団連くりっぷ No.66 (1997年11月13日)

日本銀行幹部との懇談会(司会 樋口副会長)/10月22日

景気回復の展望をより明確にしていくためには
構造改革の推進が重要


経団連では、松下総裁はじめ日本銀行幹部を招いて、内外の経済情勢をめぐり意見交換を行なった。松下総裁からは「景気回復の展望をより明確にしていくためには、経済の先行きに対する不透明感を払拭していくことが重要であり、その意味で構造改革の推進が一段と重要である」との説明があった。

  1. 松下総裁挨拶要旨
    1. わが国の経済には、財政面からの影響が家計支出や生産面に現れているが、一方で、輸出の増加にも支えられ、企業収益や設備投資は改善傾向を維持している。こうしたことから、景気回復の基盤は損なわれているわけではなく、今後、家計支出が回復に向かい、在庫調整圧力が低下するにつれて、景気は回復テンポを取り戻すとみられる。

    2. 当面の金融政策運営に当たっては、景気回復の基盤をよりしっかりすることに重点を置く。また、景気回復の展望をより明確にしていくために、経済の先行き不透明感の払拭が重要であり、その意味で、規制の撤廃・緩和をはじめとする構造改革の推進が必要と考える。

    3. 金融ビッグバンへの積極的対応を進めるためにも、一刻も早く不良債権処理を完了することが重要である。日本銀行としては、わが国金融システムの機能の向上や、内外からの信認を回復するため、引続き最大限の努力を払っていきたい。

  2. 海外の景況(各海外駐在参事より報告)
    1. 米国経済は、物価安定のもとで、個人消費や設備投資を中心に高成長を維持している。ただし先行きについては、個人消費の鈍化が見込まれるため、成長テンポも徐々にスローダウンしてくるとみられている。FRBの現在の最大の関心は賃金インフレを回避することにある。FRBとしては、金融市場との緊密な信頼関係を維持しながら、景気・株価のソフトランディングを狙っているものと思われる。

    2. 欧州経済は、輸出の好調などを背景に明るさが増している。ただし、税制改革や雇用対策など、構造面での改革の遅れが足かせとなって、景気回復が短命に終わる懸念がある。99年1月の通貨統合に向けて、各国金利水準の収斂が進み、産業構造調整の動きも活発化している。わが国としても、本腰を入れた対応が必要と思われる。

    3. 中国・台湾・香港・シンガポールが好調を続ける一方、ASEAN諸国は通貨不安に揺れるなど、アジア経済は二極分化が鮮明になっている。ASEANの通貨不安の問題は、実体経済への影響に加え、金融システムへの影響にも留意する必要がある。今後の東アジアの成長率は、各国のアジア向け投資の一巡という構造要因もあって、90年代前半に比べ数%ポイント程度低下するとみられている。


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