経団連くりっぷ No.66 (1997年11月13日)

日本カナダ経済委員会(委員長 江尻宏一郎氏)/10月13日

増税なき財政再建に成功したカナダ アルバータ州


日本カナダ経済委員会では、クライン アルバータ州首相よりアルバータ州の投資環境および財政改革について説明を聴取するとともに懇談した。

  1. 緊密化する日本との関係
  2. アルバータ州は他州に先駆け27年前に日本事務所を設置し、日本との関係強化に努めてきた。今や日本は国外における最大のビジネス・パートナーである。過去3年の日本への輸出は1,000億円(93年)から1,340億円(96年)へと増加している。日本からの直接投資も増加しており、96年は1,340億円となった。投資分野もエネルギー、農業、林業、加工食品、紙・パルプなど多様化している。
    日本からの来訪者の数は、過去5年間で2倍に増え、96年は15万9,000人を超えた。
    投資先としての利点は、豊富で安価な天然資源、優れた科学技術、整備されたインフラ、優秀な労働力等がある。さらに、州政府では
    1. カナダで最も低い法人税率の設定、
    2. 製造設備に対する州税の段階的引き下げ、
    3. 空港税の引き下げ、
    等、投資環境の整備に努めている。

  3. 順調に進む赤字削減
  4. 1992年の首相就任以降、州政府の赤字削減に取り組んできた。まず、州の財政状況を州民に公開して問題意識を喚起した。次に民間の財政レビュー委員会を設置した。同委員会の報告は、「州財政は4、5年で破綻する危険性がある。歳入に問題は無いが、歳出の抜本的見直しを行なう必要がある」というものだった。そこで、省庁統廃合、経費削減、公務員の給料カット、公共サービス削減等の大幅な歳出削減を実施した。さらに、予算の収支均衡を法律で定めるとともに、消費税や法人税の引き上げによる財政赤字削減を違法とした。
    債務返済が完了するまで新たな施策には着手しないが、返済が完成した暁には、教育改革および医療改革を行ないたい。

  5. 好調な州経済
  6. 1992年から1996年までの州経済は、カナダ全体の成長率の倍近い平均4%の成長率を記録した。この成長を支えているのは製造業である。1995年には製造業部門の税収が初めてエネルギー部門からの税収を超えた。アルバータ州の1人当たりの就業率、小売消費、投資額はカナダで最高額を記録している。人口はカナダの10%だが、新規雇用創出では全体の23%を占めている。近年は、本社をカナダ東部からカルガリーに移す企業も増えている。
    このように、アルバータ州は好調な経済に支えられ、財政再建も順調に進んでいる。日本企業には大いに投資していただきたい。


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