経団連くりっぷ No.66 (1997年11月13日)

第10回日本ベネズエラ経済委員会合同会議結団式(団長 亀高素吉氏)/10月21日

回復基調にあるベネズエラ経済


第10回日本ベネズエラ経済委員会合同会議(10月23日に東京で開催)に臨む、日本側代表団の結団式を開催した。当日は外務省中南米局の島内審議官を迎え、最近のベネズエラ情勢について説明を聴取した。

  1. 経済改革の進捗状況
  2. 中南米諸国の潜在力に世界の注目が集まっているが、中でもベネズエラは、豊富な天然資源や広大で肥沃な農地、南米諸国の中では最も米国および欧州に近い等の有利な条件を持ち、政治面でもしっかりとした民主主義の伝統を持っている。しかし80年以降経済は低迷した。96年のGDP成長率は中南米主要国の中で唯一のマイナス成長(−1.6%)、インフレ率も100%を超えた。石油依存が高いため、経済全体が石油の国際市況に左右されやすく、また石油輸出のため自国通貨を高めに維持してきたため、国際競争力のある農業や製造業が育ちにくかった。

    94年に発足したカルデラ政権は、深刻な金融危機に対処するため、物価統制や為替管理等の緊急経済措置を実施した。その結果、生産活動は低迷し経済は極端に悪化した。そこで96年4月に、ガソリン価格の10倍引き上げ、卸売税・奢侈税の引き上げ、為替の自由化、物価統制の廃止、金利の自由化、国営企業の民営化、銀行システムの強化等を主な内容とする新経済政策「アジェンダ・ベネズエラ」を発表した。この結果、97年7月までの過去1年間のインフレ率は40.5%と96年の103%から大幅に改善、また97年上半期のGDP成長率は前年同期比で+4.0%を記録(特に非石油部門は96年−3.6%から+2%に改善)するなど、経済情勢は改善している。外貨準備高は180億ドルで増加傾向が続いており、為替レートも安定している。こうした理由からベネズエラ経済に対する内外の信用が回復している。他方、今後の課題として、民営化のペースが遅い、公共サービス料金の値上げ目標が達成されていない等がIMFより指摘されている。

  3. 積極的な外交政策
  4. ベネズエラにとって最大の貿易相手国は米国で、輸出入のほぼ半分を占めている。一方米国にとっても、最大の石油供給国となったベネズエラは戦略的に重要である。

    ベネズエラは中南米地域の経済統合に積極的に取り組んでいる。現在アンデスグループおよびG3のメンバーであるが、ブラジルとの関係緊密化を重視、メルコスールとの自由貿易協定締結交渉に臨んでいる。石油輸送ルートであるカリブ海諸国との関係強化やアジア重視の姿勢も強めている。今後ベネズエラは、日本を始めアジア諸国へのエネルギー輸出に力を入れ、また日本からの投資、技術移転に強い関心を持つだろう。


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