経団連くりっぷ No.66 (1997年11月13日)

輸送委員会(委員長 濱中昭一郎氏)/10月21日

活発化する物流効率化に向けた政府の取組み
―「総合物流施策大網」の実現に向けて


本年4月に「総合物流施策大綱」が閣議決定され、また来年度予算において1,500億円の物流特別枠が設けられるなど、物流効率化に向けた動きが活発化している。そこで輸送委員会では、運輸省の和田敬司総務審議官より、物流効率化に向けた政府の取組み等について説明を聞いた。

  1. 物流をめぐる環境条件の変化
    1. 求められる物流の効率化
    2. バブル経済が崩壊し経済活動が停滞している中で、物流マーケットの伸びも停滞している。現在は経済構造の転換期であり、生産拠点の海外シフト、逆輸入を含めた製品輸入の増加、経済活動のグローバル化等を踏まえ、各国との条件上の比較を念頭において政策を考える必要がある。また、低価格化の傾向が強まっており、企業内では、生産原価や販売過程での原価等の見直しに続き、物流面の効率化に取り組んでいる。
      一方で、地球環境問題への関心も高まっており、さまざまな面から物流の効率化が国民的課題となっている。
      昨今、規制緩和が重要視されており、物流事業への新規参入を容易にして競争を高め、効率を高めていく方向にある。また、情報技術の革新を生産、販売だけでなく物流の面にも応用し、効率化・合理化を図ろうという動きも盛んになっている。

    3. 国際間取り引きの増大
    4. 80年代は欧米への生産拠点シフトが大きな流れであったが、90年代に入って、アジアに生産拠点を移す動きが活発になっており、輸出に比べ輸入が大きな伸びを示している。国内生産の減少と製品輸入の増加に伴い、国内での物流が減り、国際間の動きが増加するなど、物流環境も変わってきている。また、輸入製品においては、配送だけではなく、輸入ターミナルでの流通加工や在庫管理を含めた機能が必要になっており、FAZ(輸入促進地域)を中心として、このような状況に対応した輸入施設が各主要港湾で整備されつつある。また、コンテナ船の大型化に伴い、コンテナヤードの拡充や輸入貨物の取り扱いに適した作業スペースの充実、バースの大水深化が必要となっている。航空貨物についても、物流量の増加に対応した流通加工が可能な総合的な物流施設の急速な整備が課題となっている。
      生産の海外移転だけでなく、フォワーダーのアジア進出も増えており、国際的な複合一貫輸送を目指した動きも活発化している。

  2. 物流に関する政府等の動き
    1. 総合物流施策大網の策定
    2. 以上のような変化も踏まえ、各省庁が一体となって昨年12月に「経済構造の変革と創造のためのプログラム」を策定した。その中で、物流について国際的に見劣りのしないサービス水準、価格を目指すことなどが盛り込まれ、これを受けて、本年4月、総合物流施策大綱が策定された。
      大綱では、幹線道路・主要国際空港・主要港湾等の社会資本整備、規制緩和の推進、物流システムの高度化等とともに、都市内物流における共同集配やTDM(交通需要マネジメント)の推進、地域間物流での鉄道や内航海運の活用、複合一貫輸送の推進、国際物流におけるハブ港湾の大水深コンテナターミナルの整備やアクセス道路に係る建設省との連携強化等を打ち出した。
      これを受け、各省庁の局長クラスから成る総合物流施策推進会議が発足し、さらに各地方ごとに推進会議が設けられた。また、物流情報化、一貫パレチゼーション、物流EDI(電子データ交換)、物流拠点の配置等、項目ごとに関係省庁から成るワーキング・グループも設置された。

    3. 来年度予算における物流特別枠の設定
    4. 来年度の予算編成は、財政構造改革を進める観点から歳出を抑える必要があり、公共事業については対前年度7%カットという縛りがあるが、物流については1,500億円の物流特別枠が設けられた。運輸省関係では、拠点空港、中枢・中核港湾、貨物鉄道の整備、コンテナ船、RORO船に対応した内貿ターミナル等の整備を中心に252億円を概算要求している。
      以上のように物流効率化が政府レベルで重要視されており、政党においても自民党の物流問題調査会の発足等、関心が高まっている。

  3. 物流構造改革に向けた運輸省の取組み
  4. 総合物流施策大綱を受け、運輸省として当面実施すべき政策を検討し、今後の行政のベースとなる全体的な政策パッケージをまとめた。国際的な大競争時代の到来、物流ニーズの高度化・多様化、環境問題への関心の高まり等を背景として、ハード、ソフトの施策の一体的展開が必要となっている。具体的には、以下の4項目を柱として、効率的な物流システムの実現を図っていく。

    1. わが国の産業立地競争力を高めるための国際物流拠点の整備とその機能の高度化
      (国際物流基盤の整備)
      1. 国際物流拠点(空港・港湾)の重点的整備
      2. 国際物流拠点の機能の高度化

    2. 物流における労働生産性、エネルギー効率の向上のための広域物流システムの構造改革
      (モーダルシフトの推進・輸送構造の転換)
      1. 複合一貫輸送体系の構築のための基盤施設(鉄道・港湾)の重点的整備
      2. 輸送構造の転換の促進

    3. 物流における労働生産性、エネルギー効率の向上のための地域物流システムの構造改革
      (効率的地域物流システムの構築)
      1. 地域物流拠点の計画的整備
      2. 物流拠点への高度物流機能の集積と共同配送の推進

    4. 高度な物流の担い手の支援のための諸制度の見直し・基盤整備および標準化・情報化などのソフト・インフラの整備
      (物流システムの高度化の推進)
      1. サードパーティーロジスティクス等の新たな物流サービス展開のための環境整備
      2. 高度な物流サービスを展開するための基盤整備およびソフト・インフラの整備


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