経団連くりっぷ No.67 (1997年11月27日)

第24回北陸地方経済懇談会/11月11日

改革と社会資本整備の推進に向けて
─北陸経済界と懇談


経団連では「21世紀に向けた改革の推進と新たな北陸の創造」をテーマに北陸経済連合会(北経連)と共催により、標記懇談会を金沢市内にて開催した。経団連からは豊田会長、末松・樋口・今井・古川・前田の各副会長、北経連からは谷会長はじめ130名の地元財界人の出席を得て、種々意見交換を行なった。

  1. 谷正雄北経連会長挨拶
  2. 北陸地域の経済情勢は、公共投資の削減、個人消費の低迷などにより、先行きの不透明感が払拭できない状況にある。政府においては、早急に景気の浮揚を実感できる具体的な景気対策を取りまとめ、実行に移していただきたい。
    北経連では、地域経済の活性化に向け、日本海国土軸の形成ならびに環日本海経済交流の促進に積極的に取り組んでいる。これらの骨格となるのが、北陸新幹線をはじめとする社会資本整備であるが、北陸地域においては未だ不十分な状態にあり、公共投資の重点配分が必要である。
    また、北経連では、創立30周年を機に、「北陸21世紀ビジョン」をとりまとめた。今後は、このビジョンを基に、21世紀に向けた新たな北陸の創造に取り組んでいきたい。


    挨拶をする谷 北経連会長

  3. 北経連側発言
    1. 行財政改革と地域の取り組み
      久保田照雄 副会長(北陸銀行相談役)
    2. 政府においては、現在、6大改革を推進しており、北経連としても積極的に協力していく所存であるが、改革の推進にあたっては、地域の視点に立って実行することが望まれる。
      現在、わが国の財政は大変厳しい状況にあり、21世紀に向け活力ある経済社会を構築していくためには、財政構造改革の断行が不可欠であり、地域としては痛みを分かちながらも協力していきたい。他方、自らの力で地域の発展に取り組むためには、立ち遅れた社会資本整備を推進することも重要であり、地域の実情を踏まえ重点的に行なわれる必要がある。さらに、地方分権も重要な課題であり、大幅な権限を地域へ移譲するとともに、税財源の確保が十分になされる必要がある。

    3. 地域産業の高度化に向けて
      澁谷亮治 常任理事(澁谷工業会長)
    4. 北陸は、歴史的に産業・技術の蓄積が高い地域であり、北経連では地域産業の高度化に向けて、北陸の企業が有する技術や開発力と大学ならびに研究機関が有する研究力との融合を図り、新しい技術を生み出し、新産業への発展につなげる推進支援機構「北陸スーパー・テクノ・コンソーシアム」の設置等を提言するとともに、北陸地域の一体的な経済発展を図るべく、地域の持つ潜在力を最大限に活用した、広域的な取り組みを行なっている。

    5. 日本海国土軸の拠点形成に向けて
      宮 太郎 副会長(大和会長)
    6. 財政構造改革による公共投資の一律削減は、地方経済に大きな打撃となるばかりか、国土の均衡ある発展という考え方に反することにもなりかねない。北陸地方は長年「裏日本」の地位に甘んじてきており、その地位から脱却するために、私は1967年の北回り新幹線構想以来、北陸新幹線の意義を訴え続けているが、今日まで構想は実現していない。政府・与党の整備新幹線検討委員会では、長野〜上越間での採算性を検討しているが、この区間で採算を図る考え方には無理がある。整備新幹線の採算性は上越以西も含めて考えるべきである。「5年待て」と言われれば待つが、「任せておけ」と胸を叩いて20数年間待たされるのは問題であろう。

    7. 環日本海経済交流の推進について
      市橋 保 副会長(福井銀行相談役)
    8. 新しい全国総合開発計画において、北陸地域は環日本海経済交流の拠点として期待されている。先般の日ロ首脳会談により富山県とロシアとの交流の促進が見込まれるほか、福井県では、中国浙江省との交流が盛んになっており、研修生の交換による相互理解を深めるとともに、茶や生糸の輸入や機械の輸出なども行ないたいと考えている。アジア諸国との交流も一層発展していくと考えているが、そのためには、高コスト構造を是正するとともに、遅れている日本海側の港湾と背後地を結ぶ高速道路網を整備することが急務である。

  4. 経団連側発言
  5. 今井副会長から「ここ数年を改革の正念場と捉え諸改革の実行に取り組む」、前田副会長から「ぜひとも法人税率の10%引き下げに道筋をつけたい」との決意が示された。さらに、樋口副会長からは「No Action Talk Only(NATO)では新産業は起こせない」、古川副会長からは北陸新幹線の長野〜上越間の採算性の問題について「グランドデザインの中に位置づけず、部分のみで評価すると後世代に負担のみを残しかねない」、末松副会長からは「両岸交流に関して多くの実績と経験を持つ北経連と情報交換を密にしていきたい」との発言があった。最後に豊田会長が「北陸の自立に向けた取り組みを応援する」と締め括った。


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