経団連くりっぷ No.67 (1997年11月27日)

日本コロンビア経済委員会(委員長 槇原 稔氏)/11月12日

積極的なエネルギー政策を推進するコロンビア
−カブラレス鉱山・エネルギー大臣と懇談


日本コロンビア経済委員会では、来日中のカブラレス コロンビア鉱山・エネルギー大臣を迎え、コロンビアの経済情勢およびエネルギー政策について説明を聴取するとともに懇談した。コロンビア政府は、持続的な経済成長の鍵を握るものとしてエネルギー政策に力を注いでおり、大臣はエネルギー産業へのわが国からの積極的な投資を呼びかけた。

  1. カブラレス 鉱山・エネルギー大臣説明要旨
  2. カブラレス鉱山・エネルギー大臣

    1. 経済情勢概観
    2. コロンビアは南米で唯一太平洋と大西洋に面しており、この戦略的な位置が太平洋、大西洋双方にまたがる通商を可能としてきた。過去60年間、マイナス成長は1度もなく、また過去30年間の平均成長率は4.3%を記録している。82年以降に他の南米諸国が債務のリスケに迫られた際も、コロンビアはその必要がなかった。インフレ率も徐々に低下しており、97年は18%、98年は16%、2000年には1桁となる計画である。外貨準備高も輸入の7カ月分に相当する約100億ドルにのぼっている。このようにコロンビア経済は安定している。一方、政治面では早くから民主政治が確立している。
      コロンビアへはすでにさまざまな日本企業が進出しているが、特に電機、自動車、油田掘削用パイプ、天然ガス・石油パイプライン資材等の分野への日本企業の参加が重要なものとなっている。今後とも二国間の経済関係を強化していきたいと考えている。

    3. エネルギー政策
    4. 現在コロンビアの発電設備の能力の割合は75%が水力、25%が火力となっているが、今後はエルニーニョ現象の影響を受けるリスクのある水力発電への依存度を低下し、主に天然ガスによる火力発電を増強していく。3年毎に1,000メガワットずつ発電能力を増強していく計画であるが、火力、水力発電とも民間部門に開放されているので、積極的な投資をお願いしたい。
      コロンビアは石油資源にも恵まれている。現在の石油生産量は1日当たり72万バレルであるが、98年には82万バレルに増産の予定である。石油部門への日本からの投資も行われており、石油公社(Ecopetrol)とともに採掘が行なわれることになっている。現在コロンビアの東部で開発を行なっており、98年3月の生産開始が期待されている。
      天然ガスも硫黄分の少ない良質なものであり、CO2も少ないので、発電用、家庭用、自動車燃料用としての利用を促進している。特に自動車分野では、現在6,000台ある天然ガス利用のエンジンを搭載した自動車を、10年間で15万台に増やそうとしている。これによりガソリンの輸入を削減でき、また世界的にCO2による地球温暖化が問題となっている中で、環境保全の効果も期待できる。
      今後、石油、天然ガスの分野への海外からの投資促進により国際競争力が高まれば、確認埋蔵量を大幅に増やすことが可能となろう。
      石炭は70億トンの埋蔵量があり、熱量が高く硫黄と灰の含有量が少ない良質なものである。世界で取引されている石炭の10%がコロンビア産であり、主に欧州、米国に輸出されている。

    5. 石油精製所建設プロジェクト
    6. 二国間の協力プロジェクトとして進められていた石油精製所の建設について、コロンビア政府の立場を説明させていただく。
      コロンビアではガソリンの生産が足りず、輸入に頼る状況となっている。政府は石油精製事業の民営化を考えたが、精製部門の労働者の組合が強く、困難が生じた。そこで新規に民間の力で精製所を建設し、オペレーションも民間に任せることとした。もしこの建設およびオペレーションに、以前のようにEcopetrolが参加するならば、再び組合問題が起こってしまう。
      以上の理由から、今回の石油精製プロジェクトは民間にお願いし、一方、Ecopetrolは油田の開発、採掘、石油の生産、運送等の業務に専念したいと考えている。

  3. 質疑応答
  4. 経団連側:
    民営化を進める際には、裏側で政府や国営企業による支援が必要である。例えば原料の供給や、鉄道、港湾の整備は国がすべきである。民間に任せる場合でも、何らかの形で政府あるいは国営企業の担保が必要である。
    今回の日本とコロンビアの協力プロジェクトとしての石油精製所建設に関しても、Ecopetrolが経営主体となって責任を持つべきであるというのがわれわれの考えである。組合問題については、国営企業としてきちんとした対策を別途とるべきである。

    カブラレス大臣:
    今回の石油精製所建設のプロジェクトについては、国営企業の単なる民営化ではなく、コロンビア政府としては民間の力で新しい精製所を建設してほしいと考えており、国からの資本の投下はない。国の資本がでると、組合の問題が生じるからである。


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