経団連くりっぷ No.68 (1997年12月11日)

なびげーたー

当会の規制緩和意見を大幅に採用
−21世紀を切りひらく緊急経済対策−

産業本部長 永松 恵一


政府は、遂次規制緩和・撤廃計画をとりまとめているが、その成果を速やかに企業経営に取り入れれば、その効果は着実に現れる。

去る11月18日、上記緊急経済対策が発表された。今般の緊急経済対策は、規制緩和を中心とした経済構造改革、土地の取引活性化・有効利用など7項目(ただし税制は来年度税制改正の枠組み全体の中で決着)からなっているが、当会の規制緩和をはじめとする意見が幅広く採り入れられている。そのいくつかを例示的に紹介したい。

第1は、情報通信分野である。例えば、二種事業者の設備保有の一部解禁により、借りる部分と持つ部分を経営判断で選択できるようになり、コスト削減が期待できる。また、近年、通信・放送の融合による新たなサービスが登場しつつあるが、例えば予備校、塾による受験生宅への通信衛星授業は放送事業とされてきたため様々な手続きや義務が課されてきた。この事例は、高度情報通信社会を標榜しながら、法の趣旨を盾に進展する社会の実態を無視する行政の姿を如実に示しているが、今般、これを通信扱いとすることになった。その他、料金の原則届出制への移行、技術基準適合証明審査の簡素化、手数料の軽減等が盛りまれている。情報通信分野では、今後とも規制の緩和・撤廃が必要であるが、政府は、民間事業者の参入判断を容易、公平にするため、骨太の目標をたて、年次別の計画を策定することが期待される。

第2は、土地・住宅分野である。容積率の抜本的緩和、定期借家権の導入等とならんで、かねてからの課題であった土地取引の事後届出制が実現することとなった。これまでの事前届出制度の下では、地価高騰を抑制するため取引の予定対価等が不当と判断される場合、事前に勧告し、これに従わない場合には公表できることになっている。地価水準が大幅に低下し、かつ下落を続けている今日、本制度を維持する根拠はない。しかも、当該用地の有効利用促進により事業の目途がたっているため、購入者のオウンリスクで周辺より高目の価格設定を受容れた場合でも、勧告の対象となる事例が生じていた。土地・住宅分野では、法律に基づく地域・地区の指定権限を持つ自治体が、国と連動した政策を打出すことが強く求められる。

第3は、福祉・医療分野である。民間企業の参入、介護サービスの支払方法の多様化などの検討が謳われている。社会福祉は行政主導の下に画一的、硬直的な仕組みとなり、腐敗を生ずる原因ともなっているが、施設介護への民間企業の参入、バウチャー(介護利用券)方式の導入など市場原理を活用することにより、安価・高質のサービスの提供、行政介入の排除、新産業の創出等が可能となる。


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