経団連くりっぷ No.68 (1997年12月11日)

新産業・新事業委員会(委員長 大賀典雄氏)/11月17日

インターネット・ビジネス展開のあり方
金融情報サービス ブルームバーグL.P.社の場合


新産業・新事業委員会は、活動の一環として、内外の起業家の具体的な経験を聞くとともに種々懇談している。11月17日、創業後16年でロイター社に次ぎ金融情報サービス業界第2位まで躍進した米国ブルームバーグL.P.(Limited Partner)社のマイケル・ブルームバーグ社長と、インターネット・ビジネス成功の条件等について懇談した。

  1. 情報通信技術の発展に伴う社会的問題
  2. マイケル・ブルームバーグ社長 通信の高速化やインターネットの普及等を背景に、
    1. 政治面(個人や企業が情報通信技術を利用して、容易に国境その他の境界線を越えて活動でき、国家は徴税や規制を行なえない)、
    2. プライバシー面(情報通信ネットワークの便利さの代償として、政府にプライバシーを知られる懸念)、
    3. 無責任情報面(インターネットを通じて、誰もが自由に情報発信を行なえる結果、情報の信頼性の判断が困難になり、また名誉毀損の可能性が高まる)、
    で社会的問題が生じる。これらについて今から真剣に検討する必要がある。

  3. インターネット・ビジネス成功の条件
    1. インターネットで提供されるコンテンツの特徴は、娯楽情報を中心に供給量が非常に多く、代替性が高いことである。したがって、通常、サービスを有料にすると、利用者はいなくなってしまう。
    2. インターネット・ビジネスで重要なのは、利用者が有料でも入手したいコンテンツやそのためのアプリケーションを提供することである。ブルームバーグL.P.社は1カ月当たり約1,200ドルの使用料を徴収しているが、それでも世界中で8万5,000台の情報端末を設置し、年率30%以上の成長を遂げている。これは、独自の付加価値の高い金融情報を利用しやすいアプリケーションによって提供しているからである。
    3. インターネット・ビジネスでは、使い慣れたプロセスで、しかもより便利なものを提供することが重要である。人は物事のプロセスを急激に変えることを好まないので、すべてがインターネットに置き換わるわけでなく、従来のプロセスの補完になる。

  4. 起業が成功した要因
  5. 金融情報サービス分野には、ロイター社とダウ・ジョーンズ社という成功した大企業が存在していたことが幸運であった。大企業は社内の意志疎通の迅速さやオープンさに欠け、顧客への対応も硬直的になりやすい。また、現在成功していると、現状を変えようとしない。そのため新規参入や事業の拡大も容易であった。今日では、ブルームバーグL.P.社がかつての2社のようにならないように注意している。


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