経団連くりっぷ No.68 (1997年12月11日)

滝上 グリーン東京社長との懇談会(司会 高原委員長代行)/11月19日

介護サービス市場におけるビジネスチャンス


新産業・新事業委員会では、有料老人ホーム・グリーン東京の滝上宗次郎社長を招いて、医療・福祉の問題点並びに福祉分野でのビジネスチャンスの観点から説明をいただくとともに、種々懇談した。滝上社長は、進展する高齢化の中、財政負担を極力抑制する上で、有料老人ホームに代表される施設介護ビジネスが有効であることを強調した。

  1. 医療・福祉の問題点
  2. 10月20日の国会財政構造改革法案審議で橋本総理は、「このままでは国民負担率(国民所得に占める税金と社会保険料の合計の割合)が70%を超える」と答弁された。現時点での年金・医療・福祉に関わる社会保障給付費は年間約70兆円に達し、国家予算から国債の元利払い分を控除した額を、すでに超過している。
    その背景には、医療・福祉の分野では、コスト意識がないまま、財・サービスが提供されていることがある。東京都では多くの市が、役職にかかわらず同年齢であれば職員の給与水準はほとんど同等であり、能力給・職務給が0%、年功給100%である。このように競争原理が機能せず、コスト意識が希薄な行政が医療・福祉を主導していることが問題である。
    また、従来、医療・福祉の分野には外からのチェックがほどんどなかった。厚生省と一部の関係者だけでなく、広く経団連や国民にこの分野に強い関心を持ってもらい、真剣に議論していただきたい。社会保障給付費の抑制を図るために、福祉・介護分野に民間活力を導入し、国民が効率的なサービスを受けられるようにすることが重要である。

  3. 介護サービス市場の特徴
  4. 介護サービス市場は、在宅介護サービスと施設介護サービスで構成される。前者は、要介護者宅へ直接出向き介護サービスを提供する。コストの大半を人的費用が占め、看護婦等を頻繁に派遣すると発生費用は急増する。介護保険制度の導入がほぼ確実な今、要介護者増によりこれに対応した介護保険給付という財政支出増大は必至である。
    一方後者は、民間有料老人ホーム等の施設内で提供するため、コストは抑制される。利用者負担が前提の有料老人ホームの場合、財政支出の面からも、効率的である。

  5. 有料老人ホームの課題
  6. 有料老人ホームに対して、誇大広告や倒産事件、入居時に介護費用を一時金として取っておきながら要介護の状態になると系列の老人保健施設等に移して医療保険費等を受け取るという介護費の二重取りなどが行なわれ、消費者には不信感が満ちている。これら一部事業者の行為に起因する風評の払拭に努めつつ、効率的優位性を活かした施設介護サービス産業の発展が期待される。


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