経団連くりっぷ No.69 (1997年12月25日)

なびげーたー

民間経済外交の成果

国際本部副本部長 角田 博


秋は国際会議が多い。特にアジア関係は多く、担当者はテンテコ舞いするが、中には予期していなかった嬉しい成果が上がることもある。

アジア各国は連鎖的な通貨、金融危機に見舞われているが、苦しい時こそ親身になって協力してくれるのは日本しかないという期待が高い。日本の投資、対日輸出の増加、資金供給の継続を求められる。経団連はアジアの8カ国と二国間会議を行なっており、その多くが秋に集中する。最近では通貨、金融が中心テーマである。

日本ベトナム経済委員会(委員長:西尾日商岩井相談役)の場合、93年に第1回合同会議を開催して以来、ベトナムの投資環境について毎回要望を繰り返してきた。最近では賄賂や役人の恣意的措置等、政府にとっては耳に痛いことも大胆に言えるようになった。個別企業では言えなくても、経団連を通せば思い切ったことが言える。

今年は投資環境の整備を求める一方で、ファン・バン・カイ新首相に会い、金融等、新政府の施策について説明を聞いた。今回はさらに以下の2点について当初予期していなかった嬉しい成果があった。

第1はハノイ日本ビジネス・クラブの正式認可である。従来ベトナムでは外国人によるこうした組織の設立を認められていなかったが、今回の合同会議開催を機に他国に先駆けて認めてくれた。西尾委員長のカウンターパートを務めるチャン・スアン・ザー計画投資大臣は、このビジネス・クラブと計画投資省で定期的に会合を開き、投資環境改善のフォローアップを行なうという前向きの提案をしてきた。

第2は債務交渉の進展である。トップとの対話という面では、カイ新首相とド・ムオイ共産党書記長の2人のトップに会えた。それ自体が極めて異例のことだが、さらに新首相との会合で、日本の銀行団との債務交渉が最終段階まで来ているのにそこから進まない、ベトナムの銀行が発行するLCの履行が遅れている等の不満を述べたところ、早速新首相からベトナム政府関係者に早期解決に向けて指示があったという。政策遂行に時間がかかると不満が強いベトナムだがクイック・レスポンスも期待できる。

会合では外資企業の輸出は今年前年比50%増、10億ドルに達し大いに貢献しているとの報告を聞いた。さらに富士通やペンタックスなどのハイテク工場や工業団地を見学して、日本企業の投資も花を開き始めていることを確認した。ド・ムオイ書記長からは、「日本経済も大変なようだが競争力は依然強い。自信を持って経済回復に務め、ベトナムの経済振興に協力してほしい。」と逆に励まされた。

今、最も深刻な問題は、電機部品や中古生産設備の輸入で極めて恣意的に高関税がかけられることで、特に国内販売を主とする企業への影響が大きい。メンバー企業の協力を得て、是正を働きかけていきたい。


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