経団連くりっぷ No.69 (1997年12月25日)

青年海外協力隊および途上国の開発に関する国際協力懇談会/11月26日

わが国の青年海外協力隊の派遣について


国際協力委員会(委員長:熊谷副会長)では、国際協力懇談会を開催し、「協力隊を育てる会」の会長でもある東京大学の中根千枝名誉教授より、「青年海外協力隊および途上国の開発」について説明を聞いた。

  1. わが国の対外協力を振り返り
  2. 日本の対外経済協力は1954年のコロンボプランへの参加にはじまる。それから58年には円借款、65年に青年海外協力隊、69年に一般無償資金協力を開始、そして91年には世界第1位の援助大国に成長した。それと同時に、国内での関心が急速に集まってきたのもこのころからである。確かにわが国の対外協力は国際社会に大きく貢献してきたし、日本の外交にとってもそれは重要な位置づけにあり、国益に沿うものである。

  3. 青年海外協力隊の隊員の不足
  4. その関心の高まりが、一方で、予算の無駄使いや運営の仕方などについてジャーナリズムをはじめとする人々の批判としてもあらわれた。それは青年海外協力隊に対しても同様である。その批判を受ける理由として、大きく次の2点があげられる。

    1. 青年海外協力隊に携わる担当者の定員の不足:
      JICA創立当時の74年と95年の状況を比べると、予算が6.9倍になっているが人員は1.2倍しか増えていない。
      また、外務省関係者の人数も同様であり、各担当者は大変なオーバーワークになっている。

    2. 現地に派遣される人材の不足:
      83年にJICAに総合研究所ができ、専門員制度により、援助体制を整えた。その大半は各省庁からリクルートしているのだが、多くは定年前後で人材が限定されるので必ずしも適材適所とはいかない。
      専門員と対称的に青年海外協力隊員は一般に募集し、3カ月の訓練をして、そして現地へ派遣する。現在、資格年齢を39歳まで延長しているが、こちらも要請人数に対して不足している。
      その隊員の不足する大きな理由として派遣に参加する時の職場の問題と帰国時の就職問題がある。特に参加時の職場の反対は大きい。

  5. 青年海外協力隊員派遣の企業協力
  6. 青年海外協力隊は顔の見える海外協力として高く評価されている。一方で、それは個人の犠牲が伴う。一部の理解ある企業などでは休職して参加できるが、大半の企業にとっては逆に、それが職場の定員削減の理由になっているのが、現状である。
    そこで各職場にあらかじめ、対外協力に携わる人の特別枠を設けて、受皿をつくるなど、今後は対外協力のために、構造的にも今までと違う対応をしていかなければならない。


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