経団連くりっぷ No.70 (1998年1月8日)

流通委員会・企画部会合同会合(委員長 鈴木敏文氏)/12月10日

流通構造の変革の方向


流通委員会と同企画部会(部会長:二木英徳ジャスコ副会長)は、12月10日合同会合を開催し、東京経済大学経営学部長の宮下正房教授から流通構造の変革の方向について説明を聞くとともに懇談した。

  1. 宮下正房教授説明概要
    1. 流通改革の目標
    2. 流通改革の目標は、消費者利益の向上にあり、流通政策の重点は流通コストの削減に置かれてきた。しかし、流通システムの情報化政策が推進される一方で、大店法により流通構造改革・効率化に歯止めがかけられ、消費者にとって経済的成果が十分に提供されてこなかった。

    3. 「日本型流通システム」の典型例と特質
    4. 日本型流通の特徴は、メーカー主導で構築されたモノ別・ブランド別の垂直的な流通システムである。例えば日用品や家電製品等については、メーカーが初期にナショナル・ブランドを確立し、卸を代理店や特約店として組織し、全国的な流通・販売組織が構築された。それは同時に価格維持の組織として機能し、高コスト流通システムを形成した。

    5. 変革の要因と変革の方向
    6. 日本全国での小売店の売場総面積の4割を500m2以上の大型店が占めており、また、コンビニエンスストアの売場面積も近年ますます増えている。つまり、モノ別の専門的な売場の割合が相対的に減り、消費者ニーズに合わせて商品ミックスされた横形マーチャンダイジングの売場が増えてきているということである。
      問題はこのように生活スタイルに合わせた売場が形成されてきている現在、従来型の川上の垂直的流通システムが小売段階での横型マーチャンダイジングとの間に不整合が生じていることである。したがって、その垂直的流通システムのなかで存在している卸・専門卸(川中)やメーカー(川上)は、小売の現場(川下)での総合的な対応に合わせて流通システムを再構築する必要に迫られている。また、小売段階からも、従来の川上・川中のシステムを変革させていくための提言と行動が必要である。
      特に、情報化によって川上・川中・川下の境界線が低くなってきている現在、相互の情報のフィードバックにより循環的な流通の仕組みを構築するよう、製・配・販で一致して取り組んでいく必要がある。

  2. 意見交換(一部)
  3. 経団連側:
    モノ別専門店向けの効率的な物流の仕組みが構築されれば、現在問題となっている中心市街地商店街の小規模専門店の活性化につながるか?

    宮下氏:
    小規模専門店の活性化には卸によるリテールサポート機能が必要である。しかし、中心市街地商店街の再開発においては、どういう商機能が求められているかという観点から、商店街構成員の再編成が必要になる。


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