経団連くりっぷ No.70 (1998年1月8日)

社会貢献推進委員会(委員長 椎名武雄氏)/12月11日

継続審議となったNPO法案については
次期通常国会での早期成立を目指す


社会貢献推進委員会では、「1996年度社会貢献活動実績調査結果(案)」について事務局から報告し審議するとともに、経団連として成立を働きかけた「市民活動促進法案」(NPO法案)の審議状況と今後の見通し、各専門部会や1%クラブの活動状況などについて報告し、意見交換を行なった。

  1. 「1996年度社会貢献活動実績調査結果(案)」について
    1. 本年で7回目を迎える調査である。93年度調査以来の大規模調査にもかかわらず、対象企業1,045社中、過去最多の429社から回答を得た(回答率41.4%)。

    2. 96年度の寄付金と自主プログラムへの支出を含めた社会貢献支出総額は1,620億円、1社平均は4億円で、前年度比1%増となった。

    3. 回答企業の96年度1社平均経常利益額が95年度に比べ31.0%の大幅増となったにもかかわらず、社会貢献支出額が経常利益に占める割合は2.40%となり、95年度に比べ0.04ポイント上昇した。

    4. 回答企業の1社平均の寄付金額は2億6,500万円となり、95年度に比べ約10%減少したが、自主プログラム支出額の1社平均は1億4,700万円であり、95年度に比べ4割近くの大幅増となった。

    5. 96年度に社会貢献活動を推進するための制度を新規に導入した企業は40社(53件)であり、95年度に比べほぼ倍増した。とくに、社員のボランティア活動を支援する制度の整備が目立つ。

    6. NPOに対する支援については、3分の2以上の企業がその重要性を認識しており、約半数の企業が支援に前向きであると答えている。

    7. 同調査結果については、要約版を広く一般に公表するとともに、『社会貢献白書1998』として出版する予定である。

  2. NPO法案(市民活動促進法案)の審議状況と今後の見通しについて
    1. 経団連では、各党のNPO法案を検討した上、先の通常国会から継続審議となっている与党案「市民活動促進法案」の今臨時国会における成立を働きかけた。
      社会貢献推進委員会意見「市民活動促進法案の今臨時国会における成立を望む」を作成し、豊田会長、若原1%クラブ会長、後藤経団連自然保護基金運営協議会会長などが関係各方面への働きかけを開始した。その結果、参議院自民党関係者を中心に、経団連の考え方に対する理解は深まっていった。

    2. 一方、参議院自民党の提案によって参議院与党3党レベルの法案修正協議があり、12月2日に法律・法人名称や認証基準変更に関する合意があった。

    3. 修正協議妥結後、与党3党は審議入りを目指したが、平成会が担当委員会である内閣委員会の理事懇談会を欠席。最終的に、NPO法案は終盤国会の審議円滑化のため、参議院において継続審議とすることになった。あわせて、平成会・太陽党有志が対案(市民公益法人法案)を提出し、共産党を含む各党は、12月8日にNPO法案の提案趣旨説明を終了した。

    4. NPO法案は、次期通常国会のかなり早い段階で審議されるとの見方がある。経団連としても、次期通常国会におけるNPO法案の早期審議入りと、早期成立を求めていく。

  3. 専門部会の活動状況について
    1. 青木利元 社会貢献基盤整備専門部会長
    2. NPO法案成立に向けた経団連の働きかけについては、市民活動団体を中心とするNPOから非常に強い支持を受けており、期待も大きい。
      NPOは企業の社会貢献活動の重要なパートナーとして、法人格の付与を中心に、一刻も早い社会的認知が必要である。今後ともNPO法案の動向について注視していきたい。

    3. 島田京子 ボランティア専門部会長
    4. 当部会では、ボランティア支援の基本方針を、「社員のボランティア活動が企業内に多様な価値観をもちこむ」よう、「個人の自発性に基づく社会参加の尊重」に留意し、各種制度作りなどの環境整備を行なうこととしている。
      今後は有識者からのヒアリングとあわせ、代替わりが進んでいる担当者間での議論を進めていく。

    5. 加藤種男 社会貢献情報交流専門部会長
    6. NPO法案の議論が進む中で、あらためて企業の社会貢献活動の意味、企業とNPOの関係が問われている。
      当部会では、社会貢献活動の意義についてあらためて検討するとともに、企業とNPOの関係について、社会貢献活動の範疇にこだわらずに検討していく。

  4. その他
  5. 日本NPOセンターの活動状況について

    日本NPOセンターは、設立して1周年を迎えた。この間、NPOの基盤を整備し、NPOと行政、NPOと企業の間に立った「中間組織(インターミディアリー)」として機能すべく活動を続けている。
    経団連としても、引き続き同センターと連携した活動を展開するなど、活動を側面的に支援していくこととしている。

  6. 懇 談
  7. 若原泰之1%クラブ会長

    NPO法案成立の働きかけをするなかで、NPOの役割やNPO法案の意義に関する各議員の理解は深まった。しかし経団連としても、企業の社会貢献活動の意味についての吟味を行ないながら、企業とNPOの連携の意義、NPOが今後の日本社会になぜ必要か、などの点について、より一層検討を重ねていく必要性があると感じた。


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