経団連くりっぷ No.71 (1998年1月22日)
来賓挨拶
日本は、内需主導型の成長を
駐日米国大使 トーマス S.フォーリー
- 日米安全保障関係は、アジア太平洋の安定と繁栄の要となっている。97年9月に新しい「日米防衛協力のための指針」が合意され、日本周辺地域の有事に対する日米協力のあり方が盛り込まれた。また、日本政府と協力して、在日米軍、とりわけ沖縄駐留米軍について、日本国民のより強い支持を得るよう努力している。
- 国際協力についてもわれわれは密接に協力していかなくてはならない。日本の政府援助は、ボスニア、中東、中央アフリカ等への援助プロジェクトの資金源になっている。われわれは、国際企業の参加を規制してしまうひも付き援助によって、これらのプログラムの効果が損なわれないよう願っており、またそうならないと確信している。
- われわれは、経団連が掲げているような「活力あるグローバル国家」に日本がなるための最良の方法の一つは、日本が国連安全保障理事会の常任理事国になることだと考えており、これからもこの目標を強力に支援していく。
- 経済面では、日本の貿易障壁の除去に多くの分野で進展がみられた。例えば、輸入半導体のシェアは現在35%になった。輸入自動車部品も前年比17%の伸びを示し、金融、電気通信サービスにおける米系企業の参入率も急増している。
とはいえ、最近この動きに陰りが見え始め、危惧している。米国の対日輸出の鈍化により、日米間の貿易不均衡が大幅に拡大してきている。貿易不均衡は14ヵ月連続拡大し、1年前の水準に比べて28%も増加した。この不均衡の拡大は、当然米国議会等で政治的懸念材料になっており、無視することはできない。
貿易紛争を迅速に解決し、新たな貿易協定を締結することが重要である。こうした観点から、日米航空協定が早期に締結され、かつ日本が情報通信、住宅、流通といった重要な分野でも規制緩和を進めることを期待している。われわれは、経団連が長年にわたり大規模小売店舗法の廃止を支持してきたことに感謝しており、これに代わる新しい法律も市場原理と国際化に逆らわないことを願っている。
- 日本には、内需主導型の成長、反競争的規制の撤廃、より強力でダイナミックな金融システムの構築を進めてほしい。われわれは、今般、日本政府が法人税、地価税、有価証券取引税の減税に加えて2兆円の所得減税案を国会に提出することを歓迎している。日本が内需主導型の持続的成長を遂げることは、アジア諸国が金融危機から脱却するために不可欠である。
- 京都議定書は、温室効果ガス削減に向けた重要なステップであった。米国は、先進国にとって公正で、達成可能な削減目標をまとめあげた議長国日本に感謝している。これからは来年のブエノスアイレスにおけるCOP4に向けて、途上国の参加を促していくことになる。
今後とも日米二国間関係の明るい未来に向けて、経済界とも協力しつつ、全力を尽くしていきたい。
くりっぷ No.71 目次/日本語のホームページへ