経団連くりっぷ No.71 (1998年1月22日)

アメリカ委員会(委員長 槙原 稔氏)/1月12日

アジア、世界のためにしっかりと日本を変えてほしい
─ロックフェラー上院議員が語る米国の対日観


ロックフェラー米国民主党上院議員を招き、日本とアジアの経済情勢に対する米国の見方について説明を聞くとともに、懇談した。

  1. 日本は今、根深い問題を抱えている。日本に経済危機が忍び寄っている。これが現実のものになると、世界は極めて危機的な状況になる。今こそ、アジアの安定化と世界のさらなる発展のために、日本のリーダーシップが求められている。

  2. 日本の最大の問題は、改革を先延ばしにしていることである。日本は財政的に余裕があるので、何ら抜本的な改革を行なわずに危機を克服してしまうのではないか、と米国は懸念している。日本が構造改革を行なわずに危機を乗り切り、国内にのみ目を向けるようになってしまうことは、米国にとって好ましくない。

  3. 現在、アジア諸国は厳しい状況に置かれており、国際的な対応が求められている。クリントン大統領は、日本がアジアの回復と成長のエンジンになってほしいと言っている。日本市場を一層開放することは、アジアの発展にとっても重要である。

  4. 諸改革を進めるにあたって、日本は多元主義をもっと重視しなければならない。現在の苦境からいかに脱却し、どのような方向に向かうのか、マスコミから一般国民に至るまで、日本国内で十分に議論し尽くす必要がある。そして、政治家もビジネス・リーダーも、もっと説明責任(アカウンタビリティ)を負わねばならない。また、大蔵省をはじめとして日本の官僚が長年行使してきた政策への影響力は、議会制民主主義で適切と思われるレベルを超えるものである。国会議員は国民の代弁者であり、官僚は議員を支える公僕である。政治に国民の声をもっと反映させねばならない。

  5. 日本が今やるべきことは、日本のシステムの弱い部分から生じている諸問題に適切に対応することである。日本の対応いかんによっては、米国は深刻な影響を受ける。私が恐れているのは、米国民の心理的な動揺である。マクロ経済の観点からすると不合理であったとしても、米国民は自分の買った株価が現実に下がるのを見れば、その原因を求める。アジアの通貨・金融不安が続いているさなかでもあるので、もし、日本が輸出拡大で不況脱出を図ろうとし、また、アジアの危機解決に何ら寄与せず、その結果、米国民の所得が下がってしまうと認識されれば、米国民は日本政府の事態打開への決意を疑い、日本への信頼が揺らいでしまうだろう。

  6. 日本人は忍耐強く、少しずつ段々に、というgradualism(漸進主義)を好むが、現下の危機への対応としては効果的ではない。より積極的、劇的な変革を行なわねばならない。


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