経団連くりっぷ No.71 (1998年1月22日)

アジア・大洋州地域委員会(委員長 末松謙一氏)/12月18日

アジア通貨危機への対応が焦点に
─APECバンクーバー会議


APECバンクーバー会議が、11月21日〜25日に開催された。今回の会議では、貿易の自由化を確実に推進するための具体的対策が議論されたのに加え、アジア通貨危機への対応が重点的に取り上げられた。そこで、本会議に参加した外務省の大島正太郎経済局長と通産省の大慈弥隆人大臣官房審議官から、本会議の成果等について聞いた。

  1. 大島経済局長説明要旨
    1. アジア経済・通貨問題への対応
    2. 最近のアジアの通貨・株式市場における変動に対する分析、対処方法について、首脳レベルで活発な議論が行なわれた。その結果、APEC地域の経済のファンダメンタルズは依然として良好であることが確認され、健全なマクロ経済と構造調整政策をはじめとする賢明かつ透明な政策を行なうことが、金融市場の安定を回復し、潜在的成長を顕在化させる鍵であるということで、認識が一致した。また、11月18、19日にマニラで合意された「金融・通貨の安定に向けたアジア域内協力強化のためのフレームワーク」への強い支持が表明された。

    3. 新規参加問題
    4. 新規参加問題については、98年からベトナム、ロシア、ペルーの参加を認めることで合意をみた。ロシアの参加については反対意見もあったが、ロシアをAPECに取り込むことは将来的にアジア太平洋地域の経済的、政治的安定につながるという点で認識が一致した。同時に、今後10年間の凍結期間の設定も決まった。

  2. 大慈弥審議官説明要旨
    1. 自由化のモメンタムの維持
    2. 自由化が実際の行動の段階に入り、各メンバーの意見を調整することが一層難しくなった。APECはWTOのような拘束力が作用する場ではないため、自由化を確実に進めていくための方法が議論の争点となっていたが、昨年のITA(情報技術協定)に倣いセクター別アプローチを取ることになった。
      セクターを絞り込む作業には大変な困難を伴ったが、自主的に前倒しして規制緩和や関税撤廃に取り組むセクターとして以下の9セクターが特定された。環境関連機器・サービス、エネルギー、水産物、玩具、林産物、宝飾品、医療機器、化学品、電気通信端末機器(相互認証)である。

    3. 経済・技術協力
    4. 自由化の利益を広く享受できるよう、昨年に引き続き経済・技術協力活動の重要性が認識された。特に民間資金を導入してインフラ整備を効果的に促進することの重要性が強調された。
      その環境整備を図るため、閣僚会合と並行して開催された貿易保険機関による会合で、域内の貿易保険機関(ECA)間の協力ための取決めが署名された。また、「インフラ整備に向けた官民パートナーシップ進化のための枠組」も承認された。


くりっぷ No.71 目次日本語のホームページ