経団連くりっぷ No.72 (1998年2月12日)

なびげーたー

組織の国際化
─国際公務員は活用できないか

国際本部長 島本明憲


国際人も、海外勤務経験者も多い。本社には国際部門がある。企業の国際展開も進み、海外生産も拡大した。しかし、組織レベルでの国際競争力が不足。

1月28日の日経新聞の株式欄コラムは、「本邦金融機関の国際競争力」と題して、わが国の金融機関の国際競争力は急速には向上しない、その理由は国際的なビジネスをマネージする力で歴然たる格差が残るからだと指摘した。多様な国際的従業員を動機づけながら、同時にリスクを管理していく力であり、当然、上職位者に多数の外国人を配し、海外拠点のみならず、本社の一部でも英語が公用語となる、とある。

たしかに、わが国金融機関の国際競争力の欠如は、昨今の最大の問題である。しかし、コラムの筆者も金融機関ばかりの問題とは思っていないであろう。製造業においても、以前から海外子会社における現地人の登用あるいは育てた技術者・技能者の流出などが問題となっていたし、また本社における外国人幹部の登用問題もある。そして、政府においてはグローバル化が必至にもかかわらず、一国的視野・対応が目立っている。つまり、英語とかグローバルな基準や慣行に対し、個人の対応はともかく、組織あるいは日本全体の対応が遅れている。対応には時間がかかる。それは、定量的な目標を立てにくく、定性的な問題だからである。思いつくことからすぐに実行するより仕方がない。留学生や働く人の受入れを拡大する、あるいは投資を呼び込むことなどの他、やはり日本人の国際化を質的にも高度化し、それを量的にも増大させる必要がある。経団連は、最後の点に関連して地味で注目を引かない会合ではあったが、1月下旬、期せずして2つ開催した。

1つは、OECDの人事部長が経団連を訪問し、OECDへの日本人職員の採用増加を期待すると表明したことである。異なる文化的背景を持つ多様な職員の連携こそが良い成果を生み出すとして、経済分野に限らず多様な分野において、高水準の能力と柔軟性を兼ね備えた人材を日本からより多く採用したいとの期待を述べた。ちなみに、日本は分担金25%、職員6%である。

もう1つは、外務省による「国際機関人材ネットワーク」構想の説明であり、日本人国際公務員の数は、主要諸国と比較して依然として遥かに少なく、例えば国連事務局においては日本人職員数の望ましい職員数の範囲に対する比率は45.4%なので、企業から人を出してほしいとのことであった。ちなみに、米国は98.7%、中国は100%およびロシアは176%などである。

OECDや国連に日本人はもっと出て行くことが国益上も期待されている。土俵がグローバルな企業は、将来のトップを選定する条件の1つとして、国際機関で、また趣旨は違うが欧米の企業で、異なる文化的背景を持つ多様な職員に伍していく能力を示したことを掲げてはどうであろうか。


くりっぷ No.72 目次日本語のホームページ