経団連くりっぷ No.72 (1998年2月12日)

英ブレア首相との懇談会(座長 樋口副会長)/1月10日

信頼性、透明性のある市場の確立を目指して
−新労働党政権の政策とEU議長国としての対欧姿勢


経団連では1月8日から13日にかけ訪日した英国のブレア首相を招き、豊田会長はじめ経団連幹部と懇談会を開催した。トニー・ブレア首相からは、新労働党政権(97年5月組閣)の経済・社会政策ならびにEU議長国(本年1月から6月)としての対欧州政策について説明を受けた。

ブレア首相

  1. 良好な日英関係
  2. 現在、日英両国関係は大変良好であり、今後も直接投資をはじめ各分野を通じてさらなる進展が期待される。投資は双方向で行なわれることが重要であり、英国からも日本への直接投資を増加するよう努力している。また、本年は天皇皇后両陛下の訪英、日英2000年委員会、英国祭の開催等も予定されており、日英関係は一層発展しよう。

  3. 労働党新政権の政策
  4. 新政権の重点政策は以下の5点である。

    1. 経済安定政策の導入:
      中央銀行に通貨政策、利子等の決定権限を委譲し、独立性を高める等国内外の信用を高めた。

    2. 金融制度の透明性、信頼性の向上:
      政府の監督の下に、金融制度の信頼性と透明性を高めていく。

    3. 財政赤字の抑制:
      緊縮財政予算を通じ、今後2〜3年の間に財政赤字をゼロにする。

    4. 教育・福祉の重視:
      今後、政府の新たな役割として「教育・職業訓練」の重要性を認識するとともに「福祉」改革を推進する責任がある。

    5. 積極的な対欧政策:
      英国は単一通貨(ユーロ)導入の第一陣には加わらないが、21世紀初頭には参加する方向で、準備を進めている。産業界および金融界、日系企業の意向を反映し、現段階からユーロ準備委員会にも積極的に参加し、シティが引き続き国際金融の中心的な存在であり続けると確信している。

  5. 欧州議長国として自由貿易体制を推進
  6. 欧州は変化、改革を必要としている。欧州が開けた透明性のある市場であり、自由貿易を支持するよう各国政府に働きかけていく。ヨーロッパが決して「Fortress Europe(ヨーロッパの砦)」にならないように努力していく所存である。

  7. 日本の規制緩和、行革への期待
  8. アジア諸国においても変化、改革が必要である。現在、日本経済は厳しい状況にあるかもしれないが、ファンダメンタルズは依然強いと認識している。英政府は、日本の規制緩和、行革等を支持している。ファンダメンタルズがしっかりしている限り、改革を推進すれば経済状態は必ず改善されることになろう。日本の政財界は国際市場の潮流、状況を認識し、金融制度改革も推進してもらいたい。日本の金融制度が均衡、整合性のとれた、透明性のある制度になることを期待している。


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