経団連くりっぷ No.72 (1998年2月12日)

第50回九州・山口経済懇談会/1月21日

グローバルで自立的な経済圏の構築を目指して
−九州経済界と懇談


経団連では「活力あるグローバル国家の建設を目指して−改革の加速と信頼の確立」を基本テーマに九州・山口経済連合会(九経連)と標記懇談会を福岡市にて開催した。経団連からは豊田会長、樋口、今井、辻、前田、鈴木の各副会長、九経連からは大野会長はじめ250名の地元財界人の出席を得て、種々意見交換を行なった。また、懇談会に先立ち、新しく整備が進められている「シーサイドももち」地区の視察を行なった。

  1. 大野 茂 九経連会長挨拶
  2. 大野 九経連会長 わが国の経済は、個人消費や住宅投資などの低迷に加え、企業の大型倒産や金融システム不安などの要因が重なり、景気の先行きに不透明感が増している。政府においては、金融システム安定化対策をはじめ思い切った景気対策に早急に取り組むことが求められる。
    九経連では、自立的な経済圏の構築を目指した地域づくりを推進している。地域の自立のためには、域内の交流と連携に不可欠な九州新幹線や高規格幹線道路などの高速交通体系、国際空港などの整備、九州北部学術研究都市構想の推進などのプロジェクトは重要である。ぜひ、このことをご理解いただくとともに、公共事業の地方への傾斜配分についてご支援をお願いしたい。


  3. 九経連側発言
    1. 財政構造改革と景気対策について
      佃 亮二 副会長(福岡銀行頭取)
    2. 九州は公共投資への依存度が高い地域であり、今後、公共投資の削減が実施されると、地域経済が受ける影響は大きい。事実、地域の景気にもさまざまな影響がではじめている。政府においては、強力な景気対策を速やかに実行し、景気の立て直しを図るべきである。
      21世紀に向けた国土づくりを考える場合に、国土軸の形成ならびに地域連携の促進が重要な鍵となる。地域内の循環を高め、自立的発展を促すためにも、地域の骨格を形成するような基礎的な社会資本については、財政構造改革の下でも、重点的に整備を進めるべきである。

    3. 規制緩和と新産業の育成
      古賀義根 副会長(東陶機器相談役)
    4. 規制緩和については、これまで、持株会社の解禁、外為法の改正、運輸分野における需給調整規制の廃止、電気通信事業分野など、幅広い分野で進展している。
      他方、いまだ数多くの許認可が残っており、今後とも一層の規制緩和の推進が必要である。当地域では、アジアへの物流拠点形成に取り組んでおり、立地規制などに関する規制緩和が望まれる。
      また、産官学の連携による新産業の創出、航空宇宙産業・観光産業などを中心とした産業の育成、アジアとの国際分業体制の構築を目指すテクノマザーランド九州構想の推進に取り組んでいる。

    5. アジア戦略について
      野崎元治 副会長(十八銀行頭取)
    6. 当地域はアジアへのゲートウエイとして、近年その交流もますます深まっている。かつては、海外との交流は国家間で行なわれていたが、最近では地域間において盛んに行なわれている。九州では、環黄海経済圏を中心とした交流が活発である。
      他方、当地域はアジア地域では、あまり知られていないのも事実であり、このため九経連では、各県と共同で当地域の産業やビジネス等の情報を提供するニュースレター「KYUSHU」を発行する等、アジア諸国への情報提供に務めている。
      今後は、現在行なわれている経済交流を発展させるだけでなく、文化面をも含めた幅広い交流拠点づくりに取り組みたい。

    7. 新たな全総計画と地域づくり
      石井幸孝 副会長(九州旅客鉄道会長)
    8. 21世紀に向けた地域づくりのためには、
      1. 自立的な経済圏の構築、
      2. アジア諸国との連携、
      等が必要不可欠である。当地域は、基礎的なインフラ整備の遅れから、本来持っているポテンシャルを十分に活かしきれていない。また、韓国とは1日交流圏にあるなど、ビジネス面での地理的優位性をもっているにもかかわらず、その役割を果たすための機能が十分ではない。
      今後、当地域がアジアへのゲートウエイとしての機能を果たし、地域として自立するためには、
      1. 当地域からアジアへ容易にアクセスできる高速交通体系等の確立、
      2. 太平洋新国土軸の形成に向けたインフラ整備、
      3. 活力ある地域産業の創造、
      4. 沖縄の経済振興、
      などが重要となろう。

    9. 沖縄の経済的自立に向けて
      嶺井政治 副会長(沖縄電力会長)
    10. 沖縄の経済振興を推進するにあたっては、
      1. 沖縄県全県域を自由貿易地域として指定するとももに、国税、地方税、関税などの減税措置を行なう、
      2. 情報通信関連産業の集積を促進する、
      3. 温暖な気候を活かし、国際観光・保養基地を形成していくこと、
      などが必要である。フリートレードゾーン制度については、いままでは関連法令が未整備なこともあって十分に機能していなかったが、今般、要望がほぼ認められることになり、同制度の今後の新たな展開に期待をしている。
      沖縄の経済振興については、九州のみならず、全国的な理解を得ないと成果はあがらない。ご理解とご支援をお願いしたい。

  4. 経団連側発言
  5. 今井副会長から「景気回復を確実なものにしながら中長期的に必要な財政構造改革を進める」、鈴木副会長から「市場原理の徹底により消費者のメリットを図るとともに、流通を担う事業者の創意の発揮を通じて内需の拡大を図る」、前田副会長から「法人実行税率40%への早期引下げの実現に向けて、一層の努力を行なう」と訴えた。さらに、辻副会長からは「環境問題は企業の存続にもかかわる重要な問題であり、企業においては、より一層の自主的な取組みをお願いしたい」、樋口副会長からは「地域全体を東アジア経済圏の中のひとつとして捉え、重点的・効率的な国土づくりを進めている九州の姿を見て、頼もしく感じた」との発言があった。最後に豊田会長が「大野会長のリーダシップの下で、引き続き、九経連が地域経済の発展に大きな役割を果たしていくことを期待する」と締め括った。


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