経団連くりっぷ No.72 (1998年2月12日)

第117回関西会員懇談会/1月22日

改革を加速し、信頼を確立する


「改革を加速し、信頼を確立する−魅力ある日本の創造を目指して」をテーマに関西会員懇談会を開催した。当日は、豊田会長、伊藤、樋口、今井、熊谷、辻、鈴木の各副会長が出席するとともに、関西地区の経団連会員約250名の参加者を得て、種々意見交換を行なった。

  1. 関西地区会員からの発言
    1. 改革路線を堅持しながら、適時、適切な経済運営を
      新宮康男氏(住友金属工業会長)
    2. 日本を21世紀においても活力のある、魅力のある国にするには、わが国の体質を思い切って改革することが不可欠である。われわれも改革に伴う痛みを我慢し、乗り越えてゆかねばならないが、体力を消失してしまっては、体質の改革も困難になる。わが国経済を本格的な回復軌道に乗せることが重要である。今後は、改革の路線を堅持しながら、適時、適切な経済運営がなされるよう、経団連においても、政策当局者に経済界の実情を認識させ、迅速な対策が出せるよう、一段の努力をお願いしたい。
      今般、法人税改革の第一歩を踏み出したことは喜ばしいが、法人税の実効税率の40%への引下げを早期に実現できるよう、関西の経済団体も結束し、経団連と連携して努力したい。税制全体の基本的仕組みとしては、直間比率の是正や所得税の累進構造の是正を考慮すべきと考える。
      また、地方への税財源移譲等を通じ、真の地方分権を推進することが不可欠であり、地方分権を強力に進めながら、中央省庁組織の整理・簡素化、定員削減をもっと大胆に行なっていくべきである。
      関西国際空港が国際ハブ空港として発展するためには、2期事業の早期実現が不可欠である。民間出資促進に対する経団連の力添えをお願いしたい。また、けいはんな学研都市の諸施設、播磨公園都市の大型放射光施設等、関西の優れた研究開発基盤、さらには関経連が昨年からスタートさせた新産業創出システムを多くの企業に積極的に活用してもらいたい。また、地元経済界では、阪神・淡路大震災の復興に全力をあげて取り組んでいるが、復興に向けての経団連の全面的な協力、支援に感謝したい。

    3. 利用者の視点から金融システム改革について検討を
      古田 武氏(鐘淵化学工業会長)
    4. わが国経済の構造改革の推進等のため、金融システム改革(日本版ビッグバン)は必須である。改革を後退させてはならないが、当面の金融システム不安の解消、無用の混乱を防ぐために、公的資金の導入といった一連の緊急措置は不可欠である。
      また、金融システム改革については利用者の視点にたった検討が必要であり、今後、次世代の産業を担う中小・中堅企業、将来のインフラ投資等への資金提供のあり方を検討することも必要である。改革に伴う不安感を払拭するためにも、政府は金融システム改革後のわが国経済・社会のグランドデザインをつくっていくことが求められる。

    5. 繊維産業における環境問題、国際協力への取組みについて
      瀧澤三郎氏(東洋紡績会長)
    6. わが国繊維産業は合繊の開発力等、世界一の技術力を有しており、地球環境問題に貢献できる技術も蓄積している。現に合繊の国内総生産のうち、約半分近くは工業用資材として、環境関連分野等に使われており、環境保全に直接貢献する製品の事業化を進めている。繊維産業の持つ技術や経験を地球環境問題に活かすために、ODAを活用することも検討してよいのではないか。
      また繊維産業では、APEC大阪会議以降、アジア太平洋繊維産業フォーラムの設置等を通じ、アジア全体の繊維産業の情報ネットワーク化を進める等、国際協力に積極的に取り組んでいる。

    7. アジアの通貨危機について
      豊住 崟氏(ダイハツ工業会長)
    8. アジア諸国で同時に発生した通貨危機は、景気減速感の強まっているわが国経済ならびに産業にも重大な影響を及ぼしている。通貨危機に対する的確な対応が求められるが、当面の対応策とは別に、中長期的視点にたってアジアへの支援策を検討していく必要がある。アジア経済の成長のネックとなっているインフラ整備の遅れをODA等によって支援することが不可欠であり、経団連においても、積極的な支援をお願いしたい。

    9. 電機産業におけるアジアの環境問題等への取組みについて
      山野 大氏(三洋電機副会長)
    10. 電機産業は戦後いち早くアジア地域に進出し、日本貿易発展の礎を築いた。現在、アジアの開発途上国は環境問題の解決に多額の資金と技術支援を必要としている。電機産業は省エネ技術、代替エネルギー開発、公害対策等、技術と経験を有しており、ODA資金の積極的活用等によりアジアへ移転できればと考える。また、通貨危機の影響を受け、ここへきてASEAN域内に輸入保護主義の動きがみられる。アジアにおける水平分業の推進に影響を与えるものであり、注視する必要がある。
      これまでにアジア各国から現地産業の強化ということで誘致要請を受け、多くの日本の中堅、中小企業がアジアに進出した。進出した日本企業に対するサポートも重要かつ喫緊の問題である。

  2. 会長・副会長発言
  3. 「経団連として規制緩和を中心に今後とも行政改革に積極的に取り組んでいきたい」(今井副会長)、「経団連として大店法廃止後の望ましい流通政策について検討を深めていきたい」(鈴木副会長)、「規制緩和、法人税減税等を通じ景気回復を確実なものにするとともに、中長期的な視点からメリハリの効いた歳出構造にしていく必要がある」(伊藤副会長)、「金融安定化策の着実な実行を引き続き求めていきたい」(樋口副会長)、「各会員企業における地球環境問題への一層の取組み強化をお願いしたい」(辻副会長)、「メリハリの効いたODA予算の実現、途上国における民活インフラ整備の推進を働きかけていく」(熊谷副会長)といった発言が続いた。最後に、豊田会長が「当面、景気対策に全力を尽くさねばならないが、わが国が21世紀において活力を保ち、世界と競争していくためには、構造改革が必要不可欠である。また、関西国際空港の第2期事業等、関西が進める諸プロジェクトに対して引き続き協力していきたい」と締め括った。


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