経団連くりっぷ No.72 (1998年2月12日)

沖縄振興策に関する説明会(司会 古川副会長/国土・住宅政策委員長)/1月28日

向上する沖縄の投資環境


経団連では、地域が特性を活かした自主的な計画を立案し、国がそれに沿ってモデル地区を設定することで、思い切った規制の緩和、税制上の優遇等を行なうことを求めてきた。今般、政府が沖縄に特別自由貿易地域制度等を創設するとしたことは、経団連の考え方に沿ったものだと評価できる。そこで、国土・住宅政策委員会では、標記会合を開催し、内閣内政審議室の安達内閣審議官、通産省の西川地域産業振興室長、沖縄県の幸喜商工労働部長から、政府の沖縄振興策の概要、沖縄の立地環境などについて説明を聞き、懇談した。

  1. 政府の沖縄振興策の取組みについて
    −内閣内政審議室 安達内閣審議官説明
  2. 政府では、沖縄問題を最重要課題のひとつとして位置づけている。沖縄の本土復帰後、沖縄振興開発特別措置法(沖振法)等の下で、沖縄開発庁を中心に、インフラ整備等を積極的に推進してきた。さらに、米軍基地の整理・縮小に向けた取組みに対応して、沖縄地域振興に向けた取組みを国と県との協力の下で進めることや、基地や政府財政に依存する経済から自立した民間主導型の経済への移行を進めることの必要性が訴えられ、一昨年9月の総理談話以降、新たな対策が講じられてきている。沖縄の失業率、とりわけ若年の失業率(12.6%)は全国平均(5.7%)の倍もあり、明らかに民間の産業活動が不足している。
    政府では、沖縄政策協議会や沖縄米軍基地所在市町村活性化に関する懇談会を設け、精力的に対策を講じているが、経団連の指摘の通り、政府でも、税制措置さえとれば企業が立地するとは考えていない。今後も企業が国や地域を選ぶ時代において、地元が企業立地を求めやすい環境をつくっていく必要があり、県の役割も大きい。
    なお、今回の税制を実施する上で沖振法の改正案が提案されているが、海上ヘリポートの建設受入れについての知事の姿勢とも関連して、自民党の検討において、継続検討となっており、懸念している。

  3. 沖縄振興税制のポイント
    −通産省 西川地域産業振興室長説明
  4. 特別自由貿易地域制度は、一定の地域内において新たに設立され、その地域で製造業等を営むことにより雇用機会の創出等を行なう法人について、その地域内で生じた所得の35%について新設後10年間は法人税、法人事業税、法人住民税を非課税にするというものである。域内では新設後5年間、地方税が免除される。したがって法人税・事業税・法人住民税の各税率を単純に合わせた表面税率(98年度)は、域外では51.5%なのに対し、域内では新設後5年間は26.3%、6年目以降10年目までも33.5%となる。中小企業については新設後5年間が19.1%、6年目以降10年目までが23.7%となり、アジアの経済特区である香港の16.5%、シンガポール(ジュロン)の26%、フィリピン(スービック)の35%と比べてみても遜色はない。
    特別自由貿易地域に加え、既存の「自由貿易地域制度」も拡充し、地域内に設備の新増設を行なう製造業等の法人について、わが国で初めて建物まで対象とした投資税額控除を行ない(機械装置15%、建物8%)、また関税の選択制(原料課税と製品課税とで有利な方を選択できる)も導入されることになっている。さらには工業等開発地区や情報通信産業振興地域における投資税額控除等の立地促進減税制度や創造的中小企業支援税制を創設する。また観光振興地域における観光振興税制や沖縄型特定免税店(デューティー・フリー・ショップ)制度を創設し、観光産業の発展にも力を注いでいく。

  5. 沖縄における企業の立地環境
    −沖縄県 幸喜商工労働部長説明
  6. 沖縄県は復帰後25年間は「本土との格差是正」を課題とする依存型経済であった。今後自立型経済へと脱却し、広くわが国南の国際交流拠点となることを目指して、97年には「国際都市形成基本構想」を打ち出した。この構想を産業面で具体化した「産業創造アクションプログラム」では、地域内外の人々に健康で快適なライフスタイルを提供する「ウェルネスアイランド沖縄」の創造を目指し、「新産業創造プログラム」など6つのプログラムを戦略的に展開する。
    今般の政府の「特別自由貿易地域制度」の創設などは、交易国家であった沖縄の歴史的経験を活かすことのできる制度であり、歓迎している。沖縄の若者は郷土を愛しており、働ける場があれば喜んで地元で働く意欲がある。地元も若者が夢を持てる、世界につながる地域づくりを実現したい。

  7. 質疑応答
  8. 経団連側:
    沖縄振興税制はいつから実施されるのか。
    政府側:
    今国会中に成立すれば4月頃から実施される。ただし、関税関連の制度は、品目の選定などが必要であり、7月頃からの実施となろう。県はすでに十分な工業用地を中城湾等に用意しており、特別自由貿易地域等の受け皿はある。

    経団連側:
    県内のインフラ整備も重要だが対アメリカ、対東京の情報インフラの整備も必要ではないか。
    沖縄県:
    情報通信基盤は充実しているが、距離コストの問題を解決すべく、「マルチメディア・アイランド構想」に基づいて、さらに高速低料金の情報通信を実現できるよう、基盤整備を進めている。

    経団連側:
    ハード系の事業者からは、本土より事業がやりにくいという声があるが。
    沖縄県:
    県民性がのんびりしているという指摘を受けることがあるが、技術教育など人材育成には力を入れている。本土で勉強し沖縄に帰ってくる人材も多い。

    経団連側:
    気象条件はどうか。
    沖縄県:
    全体的に暖かい海洋性気候で、夏は涼しく、冬は暖かい。雨は多いが、からっとしており、台風対策も万全である。

    経団連側:
    交通インフラの整備状況はどうか。鉄道敷設の予定はないのか。
    沖縄県側:
    空港、港湾、道路は十分整備されている。鉄道はないが、那覇空港から宜野湾市石嶺地区にかけてモノレールを整備中である。


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