経団連くりっぷ No.72 (1998年2月12日)

ヘイキムIAD会長との懇談会/1月29日

今後の発展が期待される中南米経済


インター・アメリカン・ダイアログ(IAD)は、米州24カ国の官民トップ、有識者がさまざまなテーマについて話し合い、政策提言を行なうフォーラムである。IADのヘイキム会長を招き、中南米経済の今後の見通し、ならびに米州における地域統合の現状などについて説明を聞いた。ヘイキム会長は、中南米経済は、政治的安定性や優れた政策立案者の存在、地域統合の進展といった利点を活かし、弱点を克服して発展の方向に向かうとの見通しを示した。

  1. 長い低成長時代
  2. 中南米経済は、60〜70年代にかけて急速な成長を遂げたが、80年代に入ると対外債務が累積する一方、石油ショック、先進国の金利上昇、一次産品価格の下落などが重なり、平均成長率1%という低成長が続いた。危機的状況に直面して各国が改革に取り組んだ結果、90年代に入ると債務危機はほぼ終了したが、依然として平均成長率は3.5%に過ぎない。
    97年の成長率は5.5%で、15年ぶりの好調であったが、アジア通貨危機の影響もあり、98年は再び成長の鈍化が予想される。

  3. 中南米経済の利点
  4. 中南米経済の根本的な弱点として、世界銀行のチーフ・エコノミストは、
    1. 貯蓄率の低さ、
    2. 輸出の不振、
    3. インフラの未整備、
    4. 民営化企業に対する規制の不備、
    5. 貧富の格差、
    を挙げている。

    しかし、今後、中南米諸国はこれらの弱点を自ら認識して修正し、以下のような利点を活かして可能性を発揮していくであろう。

    1. 民主的政治が根づき政情が安定しており、政権交代が平和裏に行なわれるとともに、経済政策の継続性が確保されている。
    2. 大蔵省、貿易省、中央銀行など経済政策の立案に関わる部門が優秀な人材を擁し、経済危機に対して迅速かつ確実な対応策をとることができる。
    3. 中南米諸国にとって最大の問題であった慢性的なインフレが、近年、目覚ましいペースで収束し、貧困層が減少している。
    4. 倒産、スキャンダル、買収などの困難のなかで生き残りをかけて体力、財務基盤を強化した銀行が、近年、外国銀行との競争にさらされ、さらに改革を進めている。
    5. 90年代に入り外国からの投資が急増、輸出も倍増している。
    6. メルコスール、北米自由貿易協定その他、数多くの自由貿易協定が締結されている。

  5. 米州における地域統合の現状
  6. 米州自由貿易地域(FTAA)交渉については、米国でファスト・トラック法案が否決されたが、他方で12の作業グループが、税制、貿易手続などのテーマ別に各国の法律、慣習を整理するなど、実質的な進展が見られる。98年4月にサンチャゴで開催される第2回米州サミットを機に予定通りFTAA交渉を開始するとともに、各作業グループで今後の検討課題を洗い出していくことになろう。


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