経団連くりっぷ No.73 (1998年2月26日)

なびげーたー

アジアのNPO発展をめざして

社会本部副本部長 安斎洋一


今日、アジア地域では、NPO(民間非営利組織)、NGO(非政府組織)関係者間の人的なネットワークが広がりを見せつつある。

本年1月9日から11日にかけて、タイのバンコクでアジアにおける民間非営利部門を支援する方策を話し合う国際会議が開かれた。アジア・太平洋地区の国々を中心とする16カ国のNPO、企業財団、国際援助機関、政府等の関係者が100名程集まり、熱の入った議論を展開した。

多くの参加者が、企業とNPOの対話をもっと盛んにしていくことと、相互の信頼を築いていくことの重要性に触れたのが印象的であった。また、現在の経済危機を企業、政府、NPO相互の信頼性確立の好機とすべきであるという意見が多く出されたことも注目に値する。今日のような危機の時にこそ、NPOは発展のための基盤を整備すべきであるという積極的な考えが打ち出されたことに私は頼もしさを感じた。

NPOの発展には、ODAを含む公的資金活用面での改革、民間寄付を促進するための税制改革、アジア諸国同士の協力の促進、人材の育成、マネジメント能力の向上や雇用面での寄与等の施策が提言として打ち出された。さらに、NPO同士の連携を図る組織を樹立する必要性や国民にNPOの存在を知ってもらう努力の必要性についても合意された。長期的には、教育の場でも、NPOについて学ぶ機会をふやすべきであるという指摘があったが、同感である。

今回の会議では、新しいテーマとして中間組織(intermediary organizations)についても話し合われたが、中間組織はNPOを強化し、企業、NPO、政府の各セクターをつなぐ役割を担うものとされ、資金や人材、情報などを提供する機能も合わせ持つ。アジア地区の経済・社会・政治の変化が激しいことが、中間組織による支援の必要性を高めているというのが参加者の共通の認識である。

また、国際化の進展は、企業、政府、NPO間の情報交換の必要性を高めている。

中間組織については、寄付提供者へのアカウンタビリティ、透明性、オープンなこと等が求められ、会員や寄付者、政府等によるガバナンスも不可欠であるというのが討論の帰結であった。

今後わが国が、内外の多種多様な問題解決に努めていく際に、NPO、NGOと企業、行政のパートナーシップを確立していく必要がある。特に、NPOは企業の社会貢献活動のパートナーとして位置付けられることから、NPOの社会的な基盤強化が不可欠である。そのうちのひとつが法人格のないNPOに簡単な手続きでこれを付与していこうとするいわゆるNPO法案であり、経団連としても今国会での早期成立を働きかけているところである。社会貢献推進委員会では、今後企業とNPOの関係について検討することにしている。


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