経団連くりっぷ No.73 (1998年2月26日)

アメリカ委員会(委員長 槇原 稔氏)/1月29日

東アジアの金融危機打開に向け、日米は積極的な役割を
−堺屋日米21世紀委員会日本側委員長講演会を開催


日米21世紀委員会(日米の民間の有識者が日米関係の現在と将来について自由に意見交換を行ない、両国政府に政策提言を行なう目的で、1996年に設立。日本側委員長:堺屋太一氏、米側委員長:ブロック元通商代表、元労働長官)では、97年12月に「東アジアの安全保障とエネルギー・環境問題に関する政策提言」を両国政府首脳に建議するとともに「東アジアの金融危機についての声明」を公表した。以下は、それらの概要と日米間で行なわれた議論の模様に関する堺屋委員長の説明要旨である。

  1. 東アジアの金融危機についての声明
    1. 東アジアの金融危機の原因は、金融機関、企業、政府の安易な行動によってバブルが生じ、不良債権が発生したことである。アジア各国で、変動為替制度への転換が行なわれなかったため、事態をより深刻にした。今回の危機は、資産価値の低下と信認の喪失を伴うため、速やかな回復が困難な状況となっている。米側は、かなり厳しい見方をしていた。

    2. 本声明で求めた短期的な対策は5点。第1に、健全な金融機関の信用を守るため、債務超過に陥っている金融機関を特定し、速やかに市場から退出させる。第2に、公的資金によって預金保険機構を強化し、一般預金者を保護する。第3に、為替変動により東アジアから、とくに日米への輸入が増大することが予測されるが、輸入制限を行なわない。第4に、日本は貸し渋りを早期に解決し、ビッグバン等規制撤廃や大幅減税によって経済を刺激して、輸入を拡大する。第5に、債務国は、透明性の確保と過剰規制の排除を重視したIMF勧告を受け入れるとともに、コーポレート・ガバナンスを強化する。

    3. さらに長期的な対策として、信用の過大供給に対する早期かつ効果的な防止と、競争的な通貨切下げの防止を求めた。

    4. このほか、アジア型の経済開発がそもそも失敗であるか否かについて、かなり踏み込んだ議論を行なった。

  2. 東アジアの安全保障、エネルギー・環境問題に関する政策提言
    1. 安保について、東アジアにおける米軍のプレゼンスが重要であるという点で、日米の認識は完全に一致した。先般「日米防衛協力のためのガイドライン」が取りまとめられ、安保面での日米の協力関係がより明確になった。新ガイドラインを歓迎し、これに沿った各種協力の実行を求める。

    2. アジアの石油輸入量の増大と中東への依存度の高まりが予測される。日米はこの変化に一致協力して対応すべきである。また、クリーンなエネルギー資源である天然ガスが注目され、パイプ・ライン開発がいろいろと計画、実施されている。日米はこの面での協力を進める必要がある。


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