経団連くりっぷ No.73 (1998年2月26日)

アメリカ委員会(委員長 槇原 稔氏)/2月9日

日米は協力し、アジアからの輸入拡大に貢献を


マイケル・ジョーダンCBS会長・米日経済協議会会長を招き、米国ビジネスの立場から見たアジア経済、日本経済の現状について説明を聞き、懇談した。

  1. ジョーダン会長の説明要旨
    1. 今回のアジアの危機は、アジアのみならず、全世界に影響を及ぼす問題である。

    2. 現在、アジア諸国は安定化を目指してIMFの支援を受け始めているので、当面の手当ては心配はない。しかし、より重要なのは、危機の一因となった銀行制度の改革と不良債権の処理である。

    3. 危機に見舞われたアジア諸国からの輸出が、通貨切下げに伴い、今後増大することが予測される。米国では議会を中心に、懸念が高まっている。しかし、日米はじめ先進国は、アジア諸国で社会不安が広がらないよう、輸入促進に努めなければならない。

    4. 今回のアジア危機について、基本的に楽観視しているが、各国が経済を建て直し、経済回復するまでには、数年かかるだろう。そのためには、2つの条件が前提となる。第1に、中国が人民元の切下げを行なわないこと、第2に、日本が金融制度改革、内需振興などを進め、経済をしっかりさせること、である。

    5. 80年代に中南米で経済危機が発生したとき、米国は何十億ドルにも及ぶ不良債権の償却を行ない、復興に力を尽くした。今回のアジアの危機に対しては、日米が協力してリーダーシップを発揮しなければならない。日本に求められる役割は大きい。

    6. しかし、米国には、投資家、金融機関、ワシントンの政策当事者を除いて、日本が感じているような切迫感はない。米経済界あげての取組みが必要であるにもかかわらず、問題意識が十分に共有されていない。93年のペソ危機のときより、支持基盤が弱い。IMFを中心とする支援に対しても、米国内では政治的な問題がある。ただし、米経済そのものは依然として調子がよいので、支援する土台はしっかりしている。

    7. 現在、米国経済は好調であるが、長期的な観点からは、問題を抱えている。第1に、ベビーブーマー世代が、今後10年程度で退職を迎えるため、社会保障制度に重大な影響が出る。第2に、現在のアジアの危機が、米企業に影響を与え始めており、米景気が減速する可能性が出てきた。

  2. 意見交換
  3. 経団連側:
    経団連は日本の景気回復のため、規制緩和と法人税引下げを求めているが、どう思うか。

    ジョーダン会長:
    米国の場合、法人税の引下げよりも、企業のリストラのほうが、景気拡大により重要な役割を果たしたと思う。減税にのみ頼るよりも、経済全体の効率化を図るほうがよい。


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