経団連くりっぷ No.73 (1998年2月26日)

OECD諮問委員会(委員長 行天豊雄氏)/2月3日

アジア経済危機の解決におけるOECDの役割
−野上OECD大使との懇談会を開催


在欧州諸国大使会議に出席のため一時帰国した野上OECD日本政府代表部大使を迎えて、最近のOECDの活動状況と今後の重要課題について説明を聞くとともに種々懇談した。野上大使は、OECDは組織面の老朽化や一部加盟国の態度が問題となっているものの、贈賄防止条約、多国間投資協定などの分野で成果を上げており、今後はアジア経済の回復に必要な法制度の整備、構造改革などの面で役割を果たすことが期待されていると述べた。

  1. 成果を上げるOECD
  2. OECDの組織・人材面での老朽化に加え、冷戦終了後の国際機関全般における米国の貢献の低下を反映して、一部の国の自己中心的な発言が目立つようになり、時宜に適った勧告や合意の形成が難しくなっている。OECDが役割を維持していくためには一定の成果を上げることが重要である。そこで、最近では以下のような活動を重点的に進めている。

    贈賄防止条約:
    外国公務員に対する贈賄の刑事犯罪化や、法人に対する処罰を目的とした条約で、厳しい交渉を経て昨年末に調印された。各国は本年春までに法案を国会に提出し年内に批准する義務を負う。

    多国間投資協定:
    ヘルムズ・バートン法をめぐる米国とEUの対立のほか、文化的例外、地域統合例外、投資と労働基準、投資と環境、留保リストの調整などの問題が残る。アジア諸国の投資環境改善に資するためにも、協定の早期締結が望まれる。

    規制制度改革:
    わが国が中心となって、規制制度改革の国別レビューを進めている。まず電力と電気通信の分野について米国、日本、オランダから実施する。

    マクロ経済運営:
    日本の緊縮型経済運営は中長期的には妥当であるが、短期的には何らかの措置が必要であるとOECDは考えている。特に今後、アジア経済の回復に必要な需要先として日本が果たすべき役割が注目されている。

  3. アジア経済の回復に果たす役割
  4. 今後の主な課題は次のようなものである。

    アジア経済の回復:
    IMF等による流動性の確保などの次の段階として、国内法・税制体系や金融市場の整備、構造問題の解決などを図る上で、OECDの役割が期待される。

    WTO新ラウンド:
    将来のWTO新ラウンド交渉に備え、政府調達や知的財産権、投資、農業問題などに関する先進国側の意見調整を開始する。

    欧州通貨統合:
    通貨統合発足後の各国のポリシーミックスのあり方などが問題となっている。

    組織改革:
    非欧州諸国を中心に、人材の削減と若返り、意思決定方式の見直し、国別分担比率の見直しなどを進めていく。


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