経団連くりっぷ No.73 (1998年2月26日)

駐欧州各国大使との懇談会/2月4日

欧州経済通貨統合に向けて


外務省主催の大使会議出席のため一時帰国中の駐欧州諸国の各国大使30人を招き、懇談会を開催した。樋口副会長、西村欧亜局長の挨拶に続き、4大使より経済通貨統合に関する説明があった。

  1. 時野谷駐EU代表部大使
    1. 経済通貨統合(EMU)に関する今後の予定について
      1. 98年3月に欧州通貨機構の報告書公表。
      2. 98年5月の欧州理事会にてEMU参加国決定。
      3. 99年1月に参加国通貨相互間レートの決定。欧州中央銀行総裁、理事が決定。
      4. 99年6月に欧州中央銀行が発足予定。

    2. EMUに関する今後の課題について
      1. 経済収斂基準を守り続けることができるか。
      2. 中長期的には財政赤字3%から黒字への財政上の構造改革が必要。
      3. 金融調整等を一本化し、諸々の市場構造改革が必要。

    全体として、欧州の良好な経済状況や過去から積み重ねられてきた政策協調の実績を鑑みれば、安定的基盤の上に予定通り、EMUは発足するであろう。

  2. 林駐英国大使
  3. 英国は98年1月から6月までEUの議長国である。21世紀の初めにEMUが軌道に乗り、国民投票実施の判断の上で、EMUに入る予定である。また、EMUの成功は英国の成功でもある。99年1月1日のEMUの円滑な発進にむけて最大の努力をし、EMU参加に向け、引き続き国内改革は進める。産業界は、一般的に政府の政策を全面的に支持している。

  4. 松浦駐フランス大使
  5. フランス経済は好調であるが、失業率が下がらないことは不安材料である。EMUについてはフランス国民の約60%は支持しており、今後のEMUの継続と成功はフランス国内与野党一致するところである。日本との関係については良好である。しかし、経済面、投資等、日本経済の動向は気になる。国内で日本景気低迷は大きく取り上げられている。

  6. 瀬木駐イタリア大使
  7. イタリアはEMUに間違いなく参加する。
    ユーロはイタリア国内の中心的課題である。イタリアは欧州という外圧を利用して、経済を変革してきた。国営企業の民営化で財政は確実に良くなり、また、年金改革の基盤も法律的に固めた。金融的政策は政治的意思を失わない限り、困難があっても大丈夫であろう。中小企業もフレキシビリティがある。失業も南の地域の家族で何とかするという風土で、大きな問題になっていない。


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