経団連くりっぷ No.73 (1998年2月26日)

流通委員会企画部会(部会長 二木英徳氏)/1月28日

大店法の廃止とこれからの流通政策


流通委員会企画部会(部会長:二木英徳ジャスコ副会長)は、昨年12月24日に産構審流通部会・中政審流通小委員会合同会議(以下、合同会議)で大店法廃止の方向を打ち出す中間答申がまとめられたことを受け、同合同会議議長である田島義博学習院大学教授から答申の内容とこれからの流通政策について説明を聞くとともに懇談した。以下は田島教授の説明の概要である。

  1. 中間答申のとりまとめの経緯
  2. 昨年5月に合同会議での検討がスタートし、まず中心市街地商業再活性化について8月に中間答申をまとめた。大店法の見直しについては、9月に入ってから実質的に審議を始め、12月24日に答申をまとめた。
    大店法については、引き続き法を維持し、むしろ規制強化すべきという中小企業関係の委員と廃止すべきという委員との間で意見が分かれた。大店法維持を求める委員も、現行の大店法のままでよいとは考えておらず、また、廃止すべきという委員の中にも、大型店の立地について何らかの規制が必要という意見があった。
    規制緩和をはじめとする構造改革を推進しようとする政府の閣議決定、WTOでの議論をはじめとする国際世論、現行の調整手法の限界と小売業をめぐる環境変化という種々の観点を併せ考えると、合同会議としての結論は大店法を廃止し、新たな社会的規制の枠組みの構築という方向に収斂していった。

  3. 大規模商業施設に対する新たな規制
  4. 大規模商業施設の建設は、わが国の限られた国土をいかに利用すべきかという問題に直結するので、その観点からの規制は必要である。また、大型店の出店・営業に伴う、周辺社会環境への負荷の軽減も、近年、重要な課題となっている。
    そこで、答申では(1)都市計画法を改正して地方自治体がきめ細かく立地について指定できるようにし、さらに(2)「大規模小売店舗立地法(仮称)」を制定して、騒音や廃棄物、交通問題等について地方自治体と出店事業者が協議する仕組みを設けるべきという結論となった。これらについては、今期の通常国会中に法案が提出される予定である。大規模小売店舗立地法については、施行までは適切な猶予期間が置かれる必要がある。

  5. 今後の中小小売業・商店街のありかた
  6. 中小小売業は、大規模商業者に対する対抗力として重要である。その力を充分に発揮するためには、ボランタリー・チェーンやフランチャイズ・チェーン等の組織として経営の合理化・効率化に取り組まねばならない。
    商店街については、中心市街地再活性化関連で予算措置が取られるようであるが、真の活性化のためには、(1)自動車による来客の利便のために充分な駐車場を用意し、(2)集客効果を高めるために飲食業・娯楽施設を中心に業種・業態の入れ替えを行なう必要がある。


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